読んだもの

『神様がまちガえる』2巻までを読んで

『神様がまちガえる』(仲谷鳰・KADAKAWA電撃コミックスNEXT)を最近読みました。おもしろかったです…で済ますのがもったいないので、もう少し書きます。 いつものように幾ばくかのネタバレをお許しください。 本作はシェアハウスの大家でかつ研究者でもある…

民法762条1項のこと(もしくは『歴史の中で語られてこなかったこと』を読んで)

日本の民法はフランスの民法の影響があるといわれますが、明確に違う部分があります。そのひとつが民法762条1項に「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする」という…

節分の豆の謎(もしくは「中世の飛礫について」を読んで)

この時期になると節分関連の豆をヨーカドーなどでみかけるようになりますが「なんで豆で鬼が逃げるのか」という趣旨のことを数年前に問われたことがあります。別に正解を云えと問われてたわけではないものの、たしかに不思議な話です。数秒考えて、鬼は歯が…

『暁の宇品』を読んで

『暁の宇品』(堀川惠子・講談社・2021)という本を読みました。宇品というのは広島市南部の港がある地名で、暁というのはそこに駐在した陸軍の船舶部門の通称です。本書は満州事変当時トップであった田尻司令官および終戦時トップであった佐伯司令官につい…

『青春ブタ野郎はマイスチューデントの夢を見ない』を読んで

『青春ブタ野郎はマイスチューデントの夢を見ない』(鴨志田一・電撃文庫・2022)を読みました。おもしろかったです…で済ますのがもったいないので、本をたくさん読んでるわけでもなければレビューを作成するほどの読解力もありませんが、書きます。 本作の…

『作りたい女と食べたい女3』を読んで(もしくは善意で囲まれたときの息苦しさのこと)

マンガをたくさん読んでいる人が世の中に居て、昼間働いているのでそれほど読めるわけでもなく、なのであんまり読んでいるほうではない奴が読んだ本やマンガについて何か書くということに抵抗を覚えていることを何度か書いています。ましてやこれから感想を…

『その着せ替え人形は恋をする』9巻10巻を読んで(もしくはアニメやマンガを好む大人の存在について)

今冬の第六波の頃に『その着せ替え人形は恋をする』というアニメを視聴し、その後順調に(…順調に?)原作にも手を出しています。着せ恋はコスプレがしたい喜多川さんといちおう裁縫が出来る五条くんが試行錯誤する物語で、アニメは5巻までに相当し9巻10巻は…

『刀の明治維新』

「おまえオモシロイな」と面と向って云われたことが以前あって、それは本人は面白いことをいったつもりがないにもかかわらずのことだったので、それ以降面白いというのはなんなのか?ということが気になっています。私にオモシロイといった人は(かつての)…

続・安政5年夏の状況(「安政コレラの感染経路を探る」を読んで)

万人受けしそうにない、細かい幕末の感染症のことを書きます。 秩父に三峯神社という古社があります。去年の夏に社務所でわけていただいた冊子「みつみ祢山」251号の中に「秩父地方の疫病除け」(高橋寛司著)という記事がありました。幕末にコレラや麻疹な…

『その着せ替え人形は恋をする』7巻8巻を読んで(もしくは「男らしさ」の得体の無さ)

今冬の第六波の頃、『その着せ替え人形は恋をする』というアニメを視聴していました。原作にも手を出しています。着せ恋はコスプレがしたい喜多川さんといちおう裁縫が出来る五条くんが試行錯誤する物語でアニメは5巻までに相当し、『その着せ替え人形は恋を…

解決してない何度も遭遇する最大のピンチ

よく覚えとけ。現実は正解なんだ。時代が悪いの、世の中がおかしいと云ったところで仕方ない。現実は事実だ。そして現状を理解、分析してみろ。そこにはきっと、なぜそうなったかという原因があるんだ。現状を認識して把握したら処理すりゃいいんだ。その行…

『中世の風景(下)』を読んで(もしくは鐘について)

いま住んでいる街には修道院が二つあって、その修道院のどちらかは朝になると鐘が鳴ります(それが聞こえる)。その鐘がどういう意味かは訊いたことはないけどお祈りの合図なのではないか、と想像しています。話がすっ飛んで恐縮なのですが・短絡的で恐縮で…

『その着せ替え人形は恋をする』6巻を読んで(もしくは投げつけられた「気持ち悪い」について)

今冬の第六波の頃、『その着せ替え人形は恋をする』というアニメを視聴していました。原作にも手を出しています。着せ恋はコスプレがしたい喜多川さんといちおう裁縫が出来る五条くんが試行錯誤する物語でアニメは5巻までに相当し、『その着せ替え人形は恋を…

『作りたい女と食べたい女2』

小説やマンガをたくさん読んでいる人が世の中に居て、昼間働いているのでそれほど読めるわけでもなく、なのであんまり読んでいるほうではない奴が読んだ本やマンガについて何か書くということに相変わらず抵抗を覚えているのですが、なにも書かずにいるのが…

『作りたい女と食べたい女1』

本やマンガをたくさん読んでいる人が世の中に居て、昼間働いているのでそれほど読めるわけでもなく、なのであんまり読んでいるほうではない奴が読んだ本やマンガについて何か書くということに最近若干の抵抗を覚えているのですが、なにも書かずにいるのがち…

「ぼくの叔父さん 網野善彦」を読んで

「ぼくの叔父さん 網野善彦」(中沢新一・集英社新書・2004)という本を読みました。ここを誰が読んでいるかわからないのでちゃんと書くと中沢新一さんは宗教学者で、網野善彦さんというのは2004年に亡くなった歴史学者です。本書は当事者でしかわからぬ網野…

当代の三平師匠のこと(もしくはある小説を読んでの雑感)

小説に書かれていることが事実であるかどうかを問うのはきわめて不粋なことと承知しつつも、「もしほんとであったらしんどいな」という部類の小説をいくつか読んだことがあります。その筆頭が立川談四楼師匠の「談志が死んだ」(立川談四楼・新潮社・2012)…

日本読書株式会社

いつもと同じようにくだらないことを書きます。 発作的座談会(椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・目黒考二著・角川文庫)という本をたしか高校生の時に確かハーケンと夏みかんと一緒に読んでいて、文庫落ちしたものを古本屋で見つけいまでも手許にあって捨てら…

「Just Because!」を読んで

「Just Because!」(鴨志田一・メディアワークス文庫・2017)を読みました。面白かったです…で、済ますのはもったいないので書きます。 いくばくかのネタバレをお許しいただきたいのですが、本書は福岡から数年ぶりに地元に戻ってきた・転校してきた主人公の…

「壽屋コピーライター開高健」を読んで

「壽屋コピーライター開高健」(坪松博之・たる出版・2014)という本を読みました。壽屋というのはいまのサントリーで、小説家である開高健さんは壽屋=サントリーのコピーライターとしても活躍していました。本書は開高健さんの書いたと思われるトリスをはじ…

「ついスマホに頼ってしまう人のための日本語入門」を読んで(もしくは辞書のこと)

「ついスマホに頼ってしまう人のための日本語入門」(堀田あけみ・村井宏栄・ナカニシヤ出版・2021)という本を最近買いました。念のため書いておくとスマホは持っていますがメール機能と通話とLINEと運行情報以外はあまり使いこなせてませんから、おそらく…

安政5年夏の状況

「一緒に来るか、所沢へ」で有名な?所沢から特急で1時間くらいのところに秩父市があり、秩父市の中心部から自動車で1時間くらいかかる山の中に三峯神社という神社があります。おそらく関東甲信越以外ではおっそろしく知名度は低いと思いますが狼(御犬様と…

本のカバーのこと(もしくは本の扱い方のこと)

東京の感染状況はかなりシビアなのですが、今日も今日とて少しくだらない話を書きます(いつもくだらないことばかり書いていますが)。 最近「開高健は何をどう読み血肉にしたか」(菊池治男・河出書房新社・2020)という本を読みました。著者は開高さんの晩…

「やがて君になる」を読んで

匿名を奇貨として書きにくいことを書きます(匿名を奇貨としていつも書きにくいことばかり書いている気がしますが)。 以前citrusという女子高生の恋愛が主題のアニメを途中から偶然視聴しました。原作を買いに行ったときにそばに置いてあって目にしたのが「…

しおりのこと(もしくはこの時期の股間について)

高校時代の英語の先生だったと思うのだけど「テストで重要なところに線を引きなさいという問題は絶対でない、だから、教科書なり本なりで重要なところがあったら自分の言葉でノートにどういうことかをまとめなさい」ということを授業中よく云っていました。…

「専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話」を読んで

「専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話」(忽那賢志・幻冬舎文庫・2021)を読みました。たいへん勉強になりました、で終わらすには惜しいので、書きます。 感染症の本当の話、と題名にあるように「感染とはなにか」というところから本書ははじまりま…

「江戸幕府の感染症対策」を読んで

第三波のあたりから長くなりそうだと考えて、いまさらなのですが感染症対策関連の新書を読んでいます。今月に入ってから「江戸幕府の感染症対策」(安藤優一郎・集英社新書・2020)という本を読みました。 本書の前半部には徳川吉宗がでてきます。私が大学生…

「感染症の日本史」を読んで

第4波が来る前ではいくらか遅すぎるかもしれぬものの、「感染症の日本史」(磯田道史・2020・文春新書)を読みました。前から書店で平積みされて存在は知っていたのですが「日本史をなぞってもなあ」と考えて手をのばさずにいて、しかしヒヤリハットとは云わ…

「海の交通、布の交通」を読んで

「日本」をめぐって(Modern Classic新書・2008)という本を買いました。パソコンを修理に出しているときに買った故・網野善彦神奈川大教授の対談集です。本屋で手に取ったときには(私は法学部卒なので)網野善彦教授がどういう人であるかは深くは知りませ…

「民衆暴力」を読んで(もしくは非常時の流言の怖さについて)

以前、「民衆暴力」(藤野裕子・中公新書2020)という本を読んだことを書いた記憶があります。そのときは秩父へ行って秩父事件について興味を持ってて秩父事件と失政に伴う経済的困窮の自己責任の萌芽について主に書いています。 「民衆暴力」は他にも関東大…