家族法

同性2人の婚姻届不受理に関する札幌高裁の判断についての雑感

家族法に関しての、すっごくめんどくさい話を書きます。しばらくおつきあいください。 婚姻に関する法律は民法にあり、しかし民法の婚姻の条文をいくら読んでも近親婚の制限や重婚禁止などの規定があっても同性同士の婚姻について禁止する条項がありません。…

同性2人が内縁関係(事実婚)状態にあたるかについてのメモ

いつものように話が長くなりますが、しばしお付き合いください。 戸籍法にのっとった婚姻届を提出し(戸籍に婚姻の文字が記載され)た場合を法律婚と呼ぶことが多いのですが、婚姻の届出をしてなくても婚姻と同じ状況にあるカップルであれば民法の条文にはな…

性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律における生殖機能除去要件についての最高裁の判断

これからめんどくさいことを書きます。長くなりますがお付き合いください。 【条文について】 「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」というのがあります。「性同一性障害者」の場合は一定の条件を満たして家裁に家事審判を申し立て、家裁が…

民法762条1項のこと(もしくは『歴史の中で語られてこなかったこと』を読んで)

日本の民法はフランスの民法の影響があるといわれますが、明確に違う部分があります。そのひとつが民法762条1項に「夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう。)とする」という…

性別変更時の手術に関しての動き(大法廷回付へ)

「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」というのがあります。「性同一性障害者」の場合は一定の条件を満たして家裁に家事審判を申し立て、家裁が許可をした場合に戸籍の性別を変更することが可能です。第3条に条件があり、条文上は二十歳以上…

同性2人の婚姻届不受理に関する東京地裁の判断についての雑感

これからしちめんどくさい話をします。でも大事なことなので書きます。以前にも似たことを書いたことがありますし、そして、しちめんどくさいことが苦手な方は読み飛ばしてください。要約を知りたい場合は赤字のところをお読みください。 まず前提となる民法…

性別変更後に産まれた子の認知に関しての事例の東京高裁の判断

いつものように話が長くなります。 民法の家族法の分野には認知という言葉があります。父または母が子について血縁上の親子関係の存在を認める旨の行為です。市役所などに婚姻届けを出している婚姻している男女の間の子は嫡出子たる地位を得て子と親の間に親…

同性2人の婚姻届不受理に関する大阪地裁の判決についての雑感

戸籍法、民法、憲法を踏まえた上での、同性2人の婚姻届不受理に関する2022年6月の大阪地裁判決の説明。

性別変更後に産まれた子の認知に関しての事例

家族法の世界には認知という言葉があります。父または母が子について血縁上の親子関係の存在を認める旨の行為です。婚姻している男女の間の子は嫡出子たる地位を得て子と親の間に親子関係が成立しますが、婚姻していない男女間の子のような事例において認知…

同性2人の婚姻届不受理関する札幌地裁の判断についての雑感

私が勤労学生だった頃、民法の家族法の授業で出された質問が「なぜ同性2人では婚姻が出来ないのか」というものでした。手許に六法があるなら民法の家族法の婚姻のところを参照していただきたいのですが、いくら読んでも近親婚の制限や重婚禁止などの規定があ…

不貞行為に異性間ではない不倫も含まれるとした事例

民法の家族法の項目には不貞行為という言葉があります。直接どういうものかという定義はありませんが・どこにも書いていませんが、よくある事例で書けば・平易な言葉で書けば配偶者間相互の性的独占が崩れるというのが判りやすいかもしれません。民法770条1…

戸籍という変わらない制度

民法の739条の1項に「婚姻は、戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、その効力を生ずる」とあります。だからなんだと云われそうな条文なのですが、「戸籍法の定めるところにより」と別の法律に丸投げしているところがちょっと特殊です。不動産の…

内縁関係の同性カップルへの適用

恋愛に関する言葉に「熱をあげる」というのがあります。どちらかというと冷静さを欠いてる状態というニュアンスです。冷静さを欠きやすい恋愛の延長線上にあるともいえる婚姻について洗濯機を買うときのように合理的かつ打算的に誰もが行動するかと云ったら…

体外受精を利用した出産の一方の意思の不存在時の父子関係

民法772条1項に「妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する」とあります。別居であっても条文を素直に読めば婚姻中の男女の間に生まれた子は基本的に婚姻中の男女の子となります。推定する、というのは、推定できない事情があればひっくり返ります。たとえ…

両性二人の合意ではない婚姻である同性婚について

これを書いてるのは40代の美中年…じゃねえ、いくらかくたびれたおっさんです。そのおっさんが紅顔の美青年だったころ…じゃねえ、いくらかくたびれた勤労学生だった頃、民法の家族法の授業で出された質問が「なぜ同性2人では婚姻が出来ないのか」というのでし…

性同一性障害者の生殖機能除却に関する最高裁の判断(一部追記あり)

「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」というのがありまして、「性同一性障害者」の場合、戸籍を変更することが出来ます。ただし第3条に条件があり、二十歳以上であることや現に婚姻をしていないこと、現に未成年の子がいないこと、生殖腺が…

生物学的親子関係がない親子に関する法改正へのうごき

民法772条 1 妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する 産まれてくる子供の父が誰か、ということについて民法は772条などで婚姻中に懐胎したらそれは夫の子としますよ、という条文を置いています。さて、日本では性同一性障害による性転換が認められていて…

奈良家裁の人工授精に関する父子関係の判断について(16日一部追記)

民法772条1項に「妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する」とあります。別居であっても条文を素直に読めば婚姻中の男女の間に生まれた子は基本的に婚姻中の男女の子となります。推定する、というのは、推定できない事情があればひっくり返るのです。たと…

英国の同性婚のことについて

英国において同性愛というのは50年前まで犯罪でした。英国の国会議員が問題提起して英国政府が動き、1957年にウルフェンデンリポートというのがでます。内容としては刑法から道徳的な要素を排除するべき、という提言で同性愛の非犯罪化を含む答申をしました…

体の性と心の性が異なる場合の性別変更の許可

日本には「性同一性障害者の性別の取り扱いの特例に関する法律」というのがあります。「性同一性障害者」の場合、戸籍を変更することが出来ます。ただし第3条に条件があり、二十歳以上であることや現に婚姻をしていないこと、現に未成年の子がいないこと、生…

ドイツの同性婚(追記あり)

同性婚という言葉がありますが同性の婚姻について受容して法にさだめる場合いくつか種類があって、 (A)婚姻は異性間のものとしておき、同性カップルに対しては同性間でも異性間で婚姻したことと同じ効果を持つ法律を別途作って施行する方法 と、 (B)異性…

「生物学的親子関係がない時代の親子」ということについて

法律が制定された時といまは事情が異なることがあったりします。民法というのはちょくちょく改正はなされているのですが、現状に対応できていない、ということがあったりします。 民法772条 1 妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する たとえば産まれてく…

民法733条改正について

どれほどいるかわからないけど、よく読んでくださっている方からすると「ああ、またか」という民法の話題です。今日閉幕した今国会において、女性にあった再婚禁止期間というのが変更になりました。 【いままでの733条および772条について】 733条 1.女は、…

父子関係についての最高裁判断

民法772条の件です。この件に関しては検索が多いので、話が長くなります。すいません。 民法772条 1 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 2 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、…

性転換者の親子関係についての最高裁判例

民法772条 1 妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する というのがあります。 夫以外の精子を使う非配偶者間の人工授精(AID)というのがあって、産科医療の現場では事例があります。いままでは配偶者以外の精子を用いた人工授精であっても婚姻中の懐胎であ…

嫡出子・非嫡出子の相続分の差異

現在の日本では両性の合意があり、市役所等に婚姻届を提出した2人の婚姻形態を法律婚とよびます。法律婚じゃない場合は事実婚とよばれたりします。嫡出子という言葉があって、婚姻関係のある男女の間に生まれた子のことを指します。対して非嫡出子ともいうの…

米国の同性婚における相続の税について

連邦最高裁の話をちょっとだけ整理しておきます。 アメリカの場合州法というのと連邦法というのがあります。同性婚は州法で認められてて、バーモント州やニューヨーク州を筆頭に同性同士の婚姻が州法で認められてて、じっさいに有効です。もちろんユタなど州…

壬申戸籍のこと

戸籍の話をちょっとだけ。 戸籍というのは明治四年に戸籍法ができて、翌年に戸籍ができました。通称壬申戸籍というものです。そのとき生きてた人は、その壬申戸籍にのってるはずです。で、戸籍というのは市町村役場にあるのですが届出というのをしないと、動…

非配偶者間の人工授精(AID)と嫡出性

お久しぶりの772条関連のお話です。 めんどくさい方は飛ばしてください。 民法772条 1 妻が婚姻中懐胎した子は、夫の子と推定する。 夫以外の精子を使う非配偶者間の人工授精(AID)というのがあって、産科医療の現場では事例があります。いままでは配偶者以…

いとこ婚

近親婚というのは日本においてタブーかっていったらそれほどではなかったりします。近親間で婚姻届は出せませんがセックスをしても成人間であれば罪に問われません。問う条文すら存在しないはずです。ドイツでは禁固刑だったりします。 その伝統は古来からで…