不貞行為に異性間ではない不倫も含まれるとした事例

民法家族法の項目には不貞行為という言葉があります。直接どういうものかという定義はありませんが・どこにも書いていませんが、よくある事例で書けば・平易な言葉で書けば配偶者間相互の性的独占が崩れるというのが判りやすいかもしれません。民法770条1項1号では不貞行為が離婚原因になることを明示していますし、不貞行為の相手に配偶者から(いわゆる不倫は不法行為になるので)慰謝料請求ができます。

ただ↑は正確ではありません。

不貞行為は性的独占が崩れることと書きましたが、じゃあいたすことをいたしていないというか「離婚はしてないけど婚姻破綻状態にあったときはどうするのか?」という事例があって、そのときは不法行為は成立しません(最判H8・3・26民集50-4-993)。不貞行為が不法行為となるのは「婚姻共同生活の平和の維持という権利または法的保護に値する利益を侵害する行為」ゆえであって婚姻が破たんしてるときにはもはや権利も利益もなく不法行為は成立しないとしています。

長々と書いているのにはわけがあります。

この平成8年の最高裁判例の考えに立つと、性的行為がなくても「婚姻共同生活の平和」の維持を阻害するような行為があれば不法行為は成立しますし、仮に配偶者間の相互の性的独占が崩れたとしても「婚姻共同生活の平和」が崩れなければ不法行為は成立しなくなります。けっこうすごいことを云ってるのです。

話はいつものように素っ飛びます。

16日付産経新聞の報道で一方の配偶者が同性と不倫をし、その不倫相手に対してもう一方の配偶者が(不法行為が成り立つとして)慰謝料請求をした事例が紹介されていました。東京地裁は先月16日付の判決で、不貞行為が男女間に限らず「婚姻生活の平和を害するような性的行為」も含まれることを述べていて(これ、おおむね先に挙げた平成8年の最高裁判例の延長線上にあるものと思われるのですが)、不倫相手への慰謝料請求を認めて不倫相手に支払うよう命じています(ただし原告側が額が不服として控訴中)。

一方配偶者が同性愛者になって他の同性に付きまとうようになった離婚訴訟で不貞行為でなく770条1項5号の「その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき」で処理した事例(名古屋地判S47・2・29判例時報670号77頁)があってずっと私は学生時代から疑義を持っていて、異性間ではない不倫が不貞行為であることを明確に判断した点で今回の東京地裁の判断はちょっと興味深かったりします。

個人的な感想を書かせてください。

内縁関係の同性カップルへの適用を認めた宇都宮地裁真岡支部の判断もそうだったのですが、もしかしたらひっくり返るかもしれないものの、世の中ちょっとずつなんすが、同性愛を異性愛と同列に考える方向へ動いてるのかもしれません。