内縁関係の同性カップルへの適用

恋愛に関する言葉に「熱をあげる」というのがあります。どちらかというと冷静さを欠いてる状態というニュアンスです。冷静さを欠きやすい恋愛の延長線上にあるともいえる婚姻について洗濯機を買うときのように合理的かつ打算的に誰もが行動するかと云ったら必ずしもそうではないはずです。民法や婚姻にまつわる積み重なってきた判例は、合理的かつ打算的に行動しないカップル・カップルを構成する個人にさまざまな法的保護を与えています。そして合理的かつ打算的とはいいきれない選択をするわけですから婚姻状態が破たんすることもあり得て、そのときは一方に責があるとき婚姻解消時にもう一方は責がある一方に慰謝料請求が可能となります。また婚姻の届出をしてなくても婚姻と同じ状況にあるカップルであっても、婚姻と微妙に異なるものの・民法の条文にはないものの、判例の積み重ねなどにより事実婚≒内縁という名称で保護を与えていて、また内縁関係にあっても破たんしたとき一方に責がある場合はもう一方は慰謝料請求の余地があります。

しかしこれらは婚姻も内縁もカップルを構成する2人の性別が異なるときの話です。

オランダやアメリカなど同性婚が制度として確立してる国があります。しかし日本は同性婚の制度はありません。なので海外で日本人が同性婚を行う場合、一般的な「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明する書面」ではない重婚でないこと・独身であることを証明を自治体が発行します。海外で同性婚を行っても「相手方と婚姻するにつき、日本国法上何等の法律的障害のないことを証明」してない婚姻になるので、十中八九、日本では婚姻とは扱われにくいです(なので海外で日本人が同性婚をした場合において、そのパートナーが日本に滞在する場合は「日本人の配偶者」としての在留許可が単純にはおりないはずで、いくらかシビアな話なのですがいまは横に置いておくとして)。

話をもとに戻すと、18日に宇都宮地裁真岡支部で、同性婚制度のあるアメリカで同性婚の届出をしその後長期間同居したあと破たんし、その一方の当事者が、もう一方の当事者と新しい現在のパートナーに対する慰謝料請求をした裁判の判決がありました。結論から書くと「同性のカップルでも、実態に応じて、一定の法的保護を与える必要性は高い」とし指摘し、婚姻が男女に限られる現時点では内縁の成立は男女に限られるとしながらも男女の内縁関係と同視できる事情がある場合には同性間でも内縁に準じた法的保護に値するとして、慰謝料請求を(男女間とは法的利益の程度が異なる点から減額しながらも)認める結果となりました。判決が確定したわけではありませんが・控訴して二審でひっくりかえるかもしれぬものの、すくなくとも同性カップルでも内縁関係を認めるとするはじめての判断で、画期的です。個人的には「(かやの外にいた)同性カップルも人として扱われる世の中になったのだ」という印象をもちました。

なお19日付毎日新聞東京版の記事を読む限り判決書きの中で憲法24条の婚姻の自由についても触れられていて、24条1項の「婚姻は両性の合意のみに基づく」について「憲法制定当時は同性婚が想定されておらず、同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」と言及し、このことが男女の内縁関係と同視すべき事情が同性カップルでもあるときには保護に値する、という判断を導いたようです。この点について・婚姻についていくらか脱線すると旧民法では戸主の同意がないと婚姻が不可でした(旧民法750条)。戦後になって戸主の同意なしで当事者間の(自由かつ平等な)意思決定に委ねられてます。現行民法は条文上は婚姻についてなぜか男女であることを語句としてまったく求めていないのですが、子についての規定が多い民法の構成を考えると子の出産を婚姻ののちの選択肢の一つとして考え婚姻が男女であることをまず暗黙の前提にし同性婚を想定せずにいたことは想像に難くなく、また憲法制定時においてもそうであったと思われます。なので、「婚姻は両性の合意のみに基づく」と書かれた24条について「憲法制定時に同性婚が想定されておらず、同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」という解釈するのは、条文や語句を拾ってそのまま読めばむちゃくちゃ云ってるように思えるのですが、背景を考えるとわからないでもない・決して変なことを云ってるわけでもないです。

世の中、ちょっとずつなんすが、動いてるのかもしれません。

[追記]

ブックマークをやってないのでこちらで書かせてください。 

この判決のなかで当該裁判官は実は「婚姻を男女間に限る必然性があるとは断じ難い状況にある」とまで述べています。こう考える人がどれほどいるかはもちろんわかりません。でもって現在、婚姻が事実上異性間2人のものに限っている実情は憲法違反なのではないかという趣旨の訴訟も提起されてるのでその結果によっては同性婚に関しては世の中が動くかもしれません(その逆もあり得ますが)。

でもって、センスは良くないものの私もセクシュアルマイノリティに片足突っ込んでるので理解できるのですが・非常に書き難いのですが、同性愛者の人がセンスが良い、というのは、自分を消す・個性を消すのが巧いからです。センスが良いという印象のぶんだけそちらに意識が行くので、隠したい内面がばれる危険性が低くなってます。もちろん褒められたら絶対嬉しいはずなので、センスの良い人に出会ったら、どの部分がどう良いか、可能なら伝えてあげてください。

[再追記]

二審、三審では憲法問題には触れませんでしたが、2021年3月最高裁で確定しました