『神さまがまちガえる』2巻までを読んで

『神さまがまちガえる』(仲谷鳰・KADAKAWA電撃コミックスNEXT)を最近読みました。おもしろかったです…で済ますのがもったいないので、もう少し書きます。

いつものように幾ばくかのネタバレをお許しください。

本作はシェアハウスの大家でかつ研究者でもある姫崎かさねとシェアハウスの住人である綿矢紺を軸に、「左右が反転する」(4話)「正体不明の生物のイメージを具現化する」(5話)などの(想像つかぬことが発生する)バグが起こりやすい社会での物語です。詳細は本作をお読みいただきたいのですが「不眠バグ」が発生する8話まではどちらかというと比較的平穏な話が続きます(平穏っていっても左右が反転したら入力がややこしくなるわけでちっとも平穏ではない旨の表現もあるのですが)。

もう幾ばくかのネタバレをお許しください。いわゆるバグがある間は紺を含む誰もが影響を受けますが研究者であるかさねはそれらのバグに比較的影響されない「原則からはずれた例外」で、傍観者かつ観察者の立場です。9話10話においてもそれは変わりません。が、9話10話はそれまでの平穏な話と異なり紺の出自に由来するエピソードがあり、紺がおのれの存在が他人と差異があり「原則からみたら例外」であることに気が付き、動揺します。紺がどうしたかやかさねがどうしたか等の詳細は本作をお読みいただきたくとして、「原則」があって「例外」があったときに「例外は原則と同じではない」と早計しちまいがちですが・他者との間に差異があったときその差異ゆえに同一視しにくくなりますが、9話10話は巧くフィクションに載せてそれをやんわりと否定していて、読んでヒリヒリ感があって唸らされています。

くだらないことを書きます。作者の前作『やがて君になる』は「特別」という言葉がキーワードとして何度も浮上しシリーズを通して伏流水のように流れていました。9話10話を読んで再度1話から読みかえすと例外であるかさねに原則が適応される紺は寄り添おうとする場面が複数あることからおそらく本作に流れるのは「原則」と「例外」かなと想像しています。どんなバグが展開されるのか?というのもあるのですが伏流水のように流れるキーワードとどう絡めてくるのか予想がつかず、次巻がちょっと気になるところではあったり。