読んだもの

『作りたい女と食べたい女1』

本やマンガをたくさん読んでいる人が世の中に居て、昼間働いているのでそれほど読めるわけでもなく、なのであんまり読んでいるほうではない奴が読んだ本やマンガについて何か書くということに最近若干の抵抗を覚えているのですが、なにも書かずにいるのがち…

「ぼくの叔父さん 網野善彦」を読んで

「ぼくの叔父さん 網野善彦」(中沢新一・集英社新書・2004)という本を読みました。ここを誰が読んでいるかわからないのでちゃんと書くと中沢新一さんは宗教学者で、網野善彦さんというのは2004年に亡くなった歴史学者です。本書は当事者でしかわからぬ網野…

当代の三平師匠のこと(もしくはある小説を読んでの雑感)

小説に書かれていることが事実であるかどうかを問うのはきわめて不粋なことと承知しつつも、「もしほんとであったらしんどいな」という部類の小説をいくつか読んだことがあります。その筆頭が立川談四楼師匠の「談志が死んだ」(立川談四楼・新潮社・2012)…

日本読書株式会社

いつもと同じようにくだらないことを書きます。 発作的座談会(椎名誠・沢野ひとし・木村晋介・目黒考二著・角川文庫)という本をたしか高校生の時に確かハーケンと夏みかんと一緒に読んでいて、文庫落ちしたものを古本屋で見つけいまでも手許にあって捨てら…

「Just Because!」を読んで

「Just Because!」(鴨志田一・メディアワークス文庫・2017)を読みました。面白かったです…で、済ますのはもったいないので書きます。 いくばくかのネタバレをお許しいただきたいのですが、本書は福岡から数年ぶりに地元に戻ってきた・転校してきた主人公の…

「壽屋コピーライター開高健」を読んで

「壽屋コピーライター開高健」(坪松博之・たる出版・2014)という本を読みました。壽屋というのはいまのサントリーで、小説家である開高健さんは壽屋=サントリーのコピーライターとしても活躍していました。本書は開高健さんの書いたと思われるトリスをはじ…

「ついスマホに頼ってしまう人のための日本語入門」を読んで(もしくは辞書のこと)

「ついスマホに頼ってしまう人のための日本語入門」(堀田あけみ・村井宏栄・ナカニシヤ出版・2021)という本を最近買いました。念のため書いておくとスマホは持っていますがメール機能と通話とLINEと運行情報以外はあまり使いこなせてませんから、おそらく…

安政5年夏の状況

「一緒に来るか、所沢へ」で有名な?所沢から特急で1時間くらいのところに秩父市があり、秩父市の中心部から自動車で1時間くらいかかる山の中に三峯神社という神社があります。おそらく関東甲信越以外ではおっそろしく知名度は低いと思いますが狼(御犬様と…

本のカバーのこと(もしくは本の扱い方のこと)

東京の感染状況はかなりシビアなのですが、今日も今日とて少しくだらない話を書きます(いつもくだらないことばかり書いていますが)。 最近「開高健は何をどう読み血肉にしたか」(菊池治男・河出書房新社・2020)という本を読みました。著者は開高さんの晩…

「やがて君になる」を読んで

匿名を奇貨として書きにくいことを書きます(匿名を奇貨としていつも書きにくいことばかり書いている気がしますが)。 以前citrusという女子高生の恋愛が主題のアニメを途中から偶然視聴しました。原作を買いに行ったときにそばに置いてあって目にしたのが「…

浴場に居る透明人間の存在の問題(もしくは問題を問題と思っていない問題)

21日付の毎日新聞東京版に韓国の新聞の元東京特派員だった方(李河東朝鮮日報国際部長)の署名記事が載っていました。その中で日本赴任中での出来事として、温泉やスポーツクラブの浴室などで清掃などで入ってくる女性の存在について書かれていて、最初は衝…

しおりのこと(もしくはこの時期の股間について)

高校時代の英語の先生だったと思うのだけど「テストで重要なところに線を引きなさいという問題は絶対でない、だから、教科書なり本なりで重要なところがあったら自分の言葉でノートにどういうことかをまとめなさい」ということを授業中よく云っていました。…

「専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話」を読んで

「専門医が教える新型コロナ・感染症の本当の話」(忽那賢志・幻冬舎文庫・2021)を読みました。たいへん勉強になりました、で終わらすには惜しいので、書きます。 感染症の本当の話、と題名にあるように「感染とはなにか」というところから本書ははじまりま…

「江戸幕府の感染症対策」を読んで

第三波のあたりから長くなりそうだと考えて、いまさらなのですが感染症対策関連の新書を読んでいます。今月に入ってから「江戸幕府の感染症対策」(安藤優一郎・集英社新書・2020)という本を読みました。 本書の前半部には徳川吉宗がでてきます。私が大学生…

「感染症の日本史」を読んで

第4波が来る前ではいくらか遅すぎるかもしれぬものの、「感染症の日本史」(磯田道史・2020・文春新書)を読みました。前から書店で平積みされて存在は知っていたのですが「日本史をなぞってもなあ」と考えて手をのばさずにいて、しかしヒヤリハットとは云わ…

「海の交通、布の交通」を読んで

「日本」をめぐって(Modern Classic新書・2008)という本を買いました。パソコンを修理に出しているときに買った故・網野善彦神奈川大教授の対談集です。本屋で手に取ったときには(私は法学部卒なので)網野善彦教授がどういう人であるかは深くは知りませ…

「民衆暴力」を読んで(もしくは非常時の流言の怖さについて)

以前、「民衆暴力」(藤野裕子・中公新書2020)という本を読んだことを書いた記憶があります。そのときは秩父へ行って秩父事件について興味を持ってて秩父事件と失政に伴う経済的困窮の自己責任の萌芽について主に書いています。 「民衆暴力」は他にも関東大…

はたらく細胞6巻

知識が無かったことを書くのは勇気が要ります。でも無かったことを有るように書くのもおかしいのでちゃんと書くと、私は20年以上前は基礎的なことを含め医学に関する基本的な知識がそれほどありませんでした。死んだ父は血小板が減少して死に至ったのですが…

文春新書「パンデミックの文明論」を読んで

ここのところ忙しくてはてなにログインもしてない状態で更新が滞りがちですが、憎まれっ子世にはばかるの言葉通りに生きのびております。そんななかでアウトプットが疲労でめんどくさくなり更新してないくせしてインプットというか本はちゃんと読んでいまし…

中公新書「感染症(増補版)」を読んで

第三波が来てから読むのは遅すぎるかもしれませんが、ここのところ「感染症」(井上栄・中公新書2020増補版)を読んでいました。すごく勉強になりました、で済ましてよいのかわからないので書きます。 本書はまず2003年に香港などで流行したSARSを例に「なぜS…

「有頂天家族」を読んで

森見登見彦さんの有頂天家族(幻冬舎文庫)を読みました。面白かったです!で済ますのはもったいないのでいくらか書きます。 多少のネタバレになるのをお許し願いたいのですが主人公は狸で、出てくるのは主人公の狸のほかには天狗と人間です(こう書くとなに…

「芭蕉の食欲」を読んで(もしくは蒟蒻ばかり残る謎について)

私は文学の素養がてんでなければ詩情を持ち合わせていないむくつけき男なので何が良い俳句かとかは正直わからないです。ただ、たまに目にする俳句などでその世界に浸ることがあります。最近読んでいた本のひとつが「葡萄色の夜明け」(開高健著小玉武編・ち…

「民衆暴力」を読んで(もしくは貧困の自己責任論の萌芽について)

私は怠惰な人間なので、仕事以外ではあまり予習はしません。行った土地で引っかかったことがあるとあとで調べることがあります。明治時代の武装蜂起である秩父事件について教科書には載っていたはずだけどどんなものかはちゃんと説明できないことに先月に秩…

「煙たい男」

義務教育の頃に「なんでこんなものを読まされなければならないのだろう」という作品がありました。筆頭は森鴎外の舞姫です。恋路とおのれに課せられた使命とどっちをとるの?という作品なのかもといまは気が付きますが、コイと云えばカープくらいしか知らず…

逃した魚のこともしくは「私の開高健」を読んで

私は本をたくさん読んでいるわけではありません。なのではてなの今週のお題が「2020年上半期」なんすけど他人にすすめられるほど本は読んでいません。ただ何冊かは読んでいます。 その中に「私の開高健」(細川布久子・集英社・2011)という本がありました。…

「もっとコロッケな日本語を」

社会人になって資金に余裕ができて本を買って読みたいと思いつつも本をたくさんは読めてはいません。しかし少ないながらも読んだ本があとから効いてくることがあります。 東海林さだおさんの「もっとコロッケな日本語を」(文春文庫・2006)もそのひとつです…

「君の膵臓をたべたい」を読んで

先日、「君の膵臓をたべたい」の映画を観たこと・若干刺さったものがあったことを書いています。19日に県境をまたいでの移動が解除になり、でも7月の盆の頃がどうなってるのかわからないので両親の眠る神奈川へ週末に行ってて、その往復の電車の共として原作…

私を構成する5つのマンガ(40代のおっさん編)

仕事やコロナにまつわるあれこれを書くとしんどくなってくる、ので、拝読させてもらってるブログを書いてる複数の方がやっているのを見て便乗してのっかります。 〇小学館学習まんが少年少女日本の歴史 私は鼻血が出やすくて耳鼻咽喉科によく通っていたので…

「青春ブタ野郎は迷えるシンガーの夢を見ない」を読んで

言葉というのはものによってはよくわからないものがあります。その言葉の意味を問うても明確には答えられなかったりします。たとえば『みんな』です。 「みんなは反対したけどお母さんは私を産んで、今日まで育ててくれたんだなーって思ったら、『みんな』っ…

歴史を紀行する

「歴史を紀行する」(文春文庫・1976)という司馬遼太郎さんの紀行文集があります。取り上げられてるのは土佐や吉備、近江などですが、歴史にとどまらずときには脱線して(瀬戸内の人間がストーリーテラーになりやすいのに対し)太宰治であるとか宮沢賢治で…