『作りたい女と食べたい女4』を読んで

最近『作りたい女と食べたい女4』(ゆざきさかおみ・KADOKAWA it comics・2023)というマンガを読んでいます。マンガをたくさん読んでいる人が世の中に居て、昼間働いているので時間が限られそれほど読めるわけでもなく、なのであんまり数を読んでいるほうではない奴が読んだ本やマンガについて何か書くということに抵抗を覚えていることを何度か書いています。加えて、これから感想を書こうとしているマンガは性的少数者が登場人物です。私もそこに一応は属するのですが他の性的少数者について理解しているかというとそれほどでもない上に頭がゆるいので、避けておいた方がよいかな、と思いつつ、なにも書かずにいるのがちょっともったいないので書きます。

物語そのものは既刊の前巻までの野本さんと春日さんを主軸に進みます。が、幾ばくかのネタバレをお許しいただきたいのですが春日さんをめぐる状況が前巻より若干シビアになり、(詳細は是非お読みいただきたいのですが)春日さんと野本さんはともにある決断をします。4巻ですべてが解決したわけでは無いものの、姓は違えども野本さんと春日さんが一緒に課題を解決しようとする点を含め、家もしくは家族とはいったいなんなのか?というのを巧くフィクションに載せてありちょっと唸らされています。もちろん(個人的には身近な)小倉トーストを筆頭に食べ物を食べるシーンも出てきていて(36話)、若干シリアスな展開を中和させています。

さて野本さんの知り合いにやはり性的少数者なのですが矢子さんという人が居て、4巻では矢子さんの過去が1話分を使って紹介されています(30話)。読んでて決して明るく楽しいわけではないもののフィクションに載せて差異がおおまかに書かれていて、矢子さんのセクシュアリティに関して正直完全に理解できているかというと怪しいですが、なんとなくは理解できた気がしています。私のような頭の弱い読者の存在を考えるときわかりやすさを狙えば矢子さんの設定の掘り下げは端折ってもおかしくないものの、きちんと伝えようとしている点に正直頭が下がります。

3巻では南雲さんというどちらかというと小食の登場人物が出てきてて、4巻にも引き続き登場しています。食べることに関して決して良い思い出ばかりではない南雲さんが、野本さんや春日さんと仲良くなるのにつれて食べることに関して良い方向に上書きされ前向きになってる点が、どってことないことなのかもしれぬものの、ちょっと唸らされています。なんとなく登場人物のセクシュアリティに目が行っていたのですが、本作では「食べる」ことにも力点を置いてることを改めて認識しました。

3巻までと同様に4巻も小倉トースト以外にもいくつもの料理が出てきます。気になったのが28話のいぶりがっことチーズのおにぎりです。いぶりがっこがどんなものかわからず彼氏に訊くとあまじょっぱいとのことで真似させてもらおうかな…という気になっています…って私のことはどうでもよくて。コスプレの話メインの着せ恋と同様に「好きなことを追求してる人たちの物語」は眺めているだけで引き込まれます。それがこの物語に別の魅力を与えているような気が。