贈与と毒(もしくは『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』を視聴して)

いつものようにくだらないことを書きます。

MXはなぜか夜にアニメを流していて、最近『お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件』(佐伯さん・GA文庫)というのをすべての回をきちんと視聴してるわけでは無いものの今冬チラ見していました。いくばくかのネタバレをお許しいただきたいのですが、隣室に住んでいる高校生の男女がそれぞれ全く何の下心がないのにもかかわらず結果的に距離を縮めてゆく物語です。栄養やバランスを考えた料理をヒロイン作ってもらうことになった主人公は貰いっぱなしはよくないと考えて贈り物をし、対して貰ったほうはその贈り物を大事にし、有形無形の贈り物を介してるうちに相互に隣室の住人のことを考えてるようになり、主人公曰く「ダメ人間になってゆく」軌跡をいまのところ(8話までは)淡々と描いてます。詳細は本作にあたっていただくとして、貰いっぱなしは良くないと考える主人公の思考は極めて自然なのですが・貰い物をしたヒロインが主人公の舌にあったものを作ったりするのも極めて自然なのですが、giftは英語で贈与ですがドイツ語では毒という意味をも持ち、贈与というのはひとをダメにする毒なのかもしれぬ、と(フィクションからなにかを読み取るのは愚かと知りつつ)妙に腑に落ちています。念のため書いておくとダメ人間といっても微笑ましいレベルのものです。

さて、こどもの頃に「知らぬ人からものを貰ってはいけない」と教わりました。それは「返さないかわりに貰った相手に従わねばならない」というのを未然に防ぐためのもので、おそらく「ものを貰ったらその分返さなければいけない」という人間の習性に根差したものと想像できます。賄賂の根っこにあるのもそこらへんかもしれません。なんかこう、書けば当たり前のことかもしれませんが上記の作品であらためて気が付いています。アニメを眺めて普通はそんなことまで考えないかもしれませんが。脱線ついでにもう少し書くと、ドイツ語におけるgiftの毒という意味はギリシア由来であることを最近教えて貰いました。それをドイツ語に組み込んだのは過去に贈与というものに苦しめられたのかなと人力詮索するのですが、どんな歴史があったのか気になるところではあったり。

話を元に戻すと、どこにでもありそうな物語がいまのところ続いています。異世界に飛ぶわけでもありません。ただ、人がちょっとずつダメになる過程を丹念に眺めるというのはフィクションであっても飽きないものだなあ、と思わされています。もしかしたらそれが作者が傍観する我々に贈与した毒で、飽きずに眺めてしまうのはその副作用かもしれないのですが。