柿のみりんがけ

何回か書いていますが両親ともにすでに他界しています。母が死んだあとは絶対売るな捨てるなと厳命されていた日本戯曲全集の歌舞伎編20冊ほどのほかに鬼平犯科帳をそのまま手許に残してます。吉右衛門丈のファンだったかは聞きそこねたものの鬼平犯科帳はがん闘病中というか入院中や抗がん剤の通院の前の日などに買ってこいと云われていいつけどうりに渡したもので、残せと言われたわけではないけどなんとなく捨てられずにいました。いまはわたしが大きめの病院など時間がかかりそうな通院時に1冊本棚から抜き出してカバンの中に入れています。でもって病院で時代小説(などのよくできたフィクション)を読むとほんと余計なことを考えなくて済みます。病院で鬼平犯科帳を読んでからなぜ鬼平犯科帳を買わされてたのか理解できるようになりました。

そんなふうにして親を追うように病院で鬼平犯科帳を読んでます、で終わらせればよいのですが、バカにされそうなことを書いておくと、鬼平犯科帳は食べ物の描写が比較的あります。去秋に「おかね新五郎」という作品を読んでいたとき柿の味醂掛けというのがでてきて「これはしゃれたものだ」と平蔵がつぶやくシーンがありました。なんとなくやってみたくなり、味醂は常備してますから病院からの帰りがけに柿を買い、剥いて切って一切れにみりんを試しにかけてみるとケンカしない程度に甘味が増し確かに「しゃれたものだ」と思えました。さらに小皿に一切れを分けて味醂を掛けてから、読んでるはずなので親孝行になるかなと思って仏壇に供えてます。ほんとずいぶん遅れた親孝行になっちまったんすが。はてな今週のお題が「母の日」なのですが、母の日になにかをする、ということはしていません。でも今年も旬になったら柿のみりんがけをやるつもりです。