岩波ブックセンタ

前にも書いたかもしれません。学資保険があるから大学へ行け、とは云われたものののあまり裕福な家ではなくて(大学へ行かなかったらエアコンがついていたであろうという後ろめたさがいまだにある)、大学が決まったあと高校の制服を着て千代田区内の新聞社の面接を受けに行ってそこにバイト先を決め、週5日働いて学生生活を過ごしていました。
わたしは法学部にいたのですが(実質あほうがくぶをでたのと同じですが)、法学部というのは科目によってはいくらでも語れる論点がいくつもあってしかしコマ数はそれほどでもないので(刑法総論でも最低語りたいのが60はくだらないけどそれを全部あなた方に丁寧に教えることは無理ですといわれた)、授業においてさらっと触れるけど質問したりすると実はすっごく奥が深いテーマ、ってなことがけっこうあります。教科書代わりになっている本には別の本の参考ページが書かれたりもしています。レポートなどを書くときには必ず書いてあるものに目を通してから書きなさい、というのがありました。気になったり目を通しておきたい本、というのが必然的に出てきます。それらを買えればいいですが悲しいかな働いててもそんな余裕はないことがあって、まず頼りにしたのが大学の図書館、そして都立日比谷か都立広尾の図書館、そこになければ同じ千代田区の神保町の本屋を回っていました。余裕がないのにどうして本屋へ行くかって?簡単です。そこに書いてあることを・要旨を必死に頭の中に入れ、店を出てからメモるのです。法学系の本が充実していたのは三省堂東京堂と岩波ブックセンタです。同じ店にしょっちゅう行くと怪しまれるので日によって行くところを変えていました。うしろめたさがあるのでお金に余裕があるときにはこれらの本屋で買っていましたし、社会人になっても神保町に行くとまずこの3店を探していました。最後に岩波ブックセンタに寄ったのは考古学の本を探しに行ったときです。法学だけでなく、歴史書もそこそこ充実していました。
でもって本日、岩波ブックセンタを経営する会社が破産しました。
しんどかったけど充実していたころの記憶の詰まった場所が無くなっちまうっていうのは、喪失感があります。