方言

春先になるとっていうか2月の終わりから3月のはじめにかけて「ひちきり餅」というのが和菓子屋さんにでてくることがあります。引千切餅とも書いてて「ひちぎり」でも通じるはずですが、よもぎの入った草餅などをいかにもちぎったように杓子状にして餡をのせたものです。餅はよもぎとも限らず、餡もきんとんであったりすることもあります。「手ぶらで」とはいわれてても手土産を持って行くとき、一緒に喰うことを前提に見た目がなんとなく春らしいお菓子なので買うことが無いわけではなかったりします。ただ東京でも売っていることは売っているのですがどうもメジャではないようで、どこでもあるわけではありません。
百貨店の和菓子売場で「ひちきりもちありますか」と尋ねたことがあるのですが、たいてい「しちきり」ですか、と訊き返されます。「いや、ひちきり」っていうのですが通じずに「残念ながら当店ではしちきりはなくて」と云われちまいます。他界した両親がともに台東区中央区の出身で「し」と「ひ」の発音がかなり怪しくDNAを引き継いだ私もどんなに「ひ」を強調しても「し」に聞えちまうらしかったり。個人的にこの「し」と「ひ」の発音のことを「ひちきり問題」と命名してるのですけどこの「ひちきり問題」のことをぼやいたら上を通過する人は笑いながら「たしかに発音あやしいね」と追い打ちをかけられちまったり。ついでに書いておくと伊勢丹の食品売場は聞きわけてくれる確率が高いです。ビバ!伊勢丹
言葉をつかえれば意図を誰かに伝えることができる、というなんとなくの幻想があるとき、そうではないことがあると言葉というのは、絶望につながる凶器になります。方言に限らず言葉って、たまにそういう怖さがあります。「ひちきり問題」は和菓子だから深刻ではありませんが、って、今週のはてなのお題が「方言」だったんすが、いつものごとく誇大妄想的になっちまいました。