取引先や上司に居たら、の話

あまり政治の話はしたくはないのですが、その禁を破ります。でもってそのうち消すつもりの記事です。

これを書いているのは若干くたびれたおっさんです。若干くたびれたおっさんになる前は紅顔の美少年でした…ってそれは冗談なんすが、領収書の管理を任されていたことがあります。複写式の領収書の束を渡されて、入金があったのち、額が正しいかどうかを確かめてから金額と宛名を書いて、正本を発送して控えをこちらで保管していました。領収書は入金があってから対応するのが基本で律儀に守っていました。そもそも支払われた金銭を受け取ることが領収でそれを書面にするわけですから、金銭を受け取る前に書いたり宛名や額面等を白紙にしたら、もはや領収書ではないです。前にも書いたはずですが一度だけ私は頭がゆるいと思われてるのか「領収金額の部分の白紙の領収書を入金前に出してくれないか」と要請されたことがあります。が、「あの、金銭を受け取る前に渡したら領収書じゃなくなりますよね?」と頭がゆるいと思われてることを逆手に断っています。

もし入金を確認する前に第三者に領収書を渡したとしたら、もはやそれは「領収書」ではなく「領収書と書いた紙」です。現金在高と領収書発行金額があわなかったら困るのでそんなことは怖くてケツの穴の小さい私にはできませんでした。もちろん入金された金銭を確認してから領収書を書くというのは別に法律で定められたことではありませんから、そんなことしなくても誰も咎めません。でも領収書を書く上で暗黙の守るべき基本原則のひとつで、取引の証明を支える市井のルールであったりします。

新聞報道が正しければ、政治家の主催する集会で、発行会社が金銭を確認する前に書かれた書面(つまり基本原則を守ってない領収書)を集会参加者からの金銭受領時に集会参加者へ手交した、というのがありました。そう云ってたのは集会を主催した、領収書の印紙税が関係してくる国税も属する行政府のトップを兼ねる政治家です。繰り返しますが発行会社が金銭を確認する前に書かれた領収書というのはちょっと考えにくいのです。百歩譲って仮にそれが事実であったとしても、だとするならば発行会社の相手の信用にかかわることなので空気を読んで口外してはいけない種類のものです。口外するのは自らを安全地帯に置きたいのかもしれませんが、その行動は軽蔑に値します。

この度辞意表明した行政府のトップは、善意に解釈すれば金銭に関する事務処理能力が無くて、ゆえに領収書についてというより市井のルールに疎いのかもしれず、だから平気で基本原則を無視した領収書の存在をほのめかすことができるのかもしれません。悪意の解釈をすれば領収書についての市井のルールなど小さなことなのですが、その小さなことすら疎いまま放置して勉強しようとせず、かつ、無視する言動をし、取引相手の信用も守れない人であるともいえます。正直、取引先や上司に居たらイヤなタイプです。

別に政治家は全知全能でなくてはいけないわけではないです。が、できることならこの緊急時に次に行政府のトップになる人には、願わくば、小さなことでも知らなければ勉強するほう、取引先や上司に居たらイヤなタイプじゃないほう、軽蔑に値する行動をしそうにない人のほう、がいいんすが。直接選べないのが歯がゆかったり。