日曜に神奈川県庁本庁舎を見学していました。目的は別にあったのですが現在横浜開港月間で一部公開中であることを現地で知って、見学した次第です。
神奈川県庁本庁舎は下部が洋風で上部が和風という俗に帝冠様式で戦前の昭和3年に建てられています。上層にある塔は五重塔を意識してる(らしい)のですがそれが(おそらく)帝冠様式でいうところの和風で、下部の事務などに使う業務棟部分は洋風、という発想です。
この「下部は洋風、上部は和風」というのは庁舎内の内部のあちこちにもありまして、階段部分の天井、床や壁と同じ色にせずなぜか和建築を思わせる漆喰を思わせる白い仕上げです。
公開されていた貴賓室(いまは応接室として利用されている部屋)も同様で、上部は寺社などにも使う格天井でありながら、下部は絨毯敷きでそこに洋風のソファです。
上部は和風のテイストを入れるというお約束を維持するために照明も工夫していて、極楽に咲くという宝相華という紋様を利用した照明やシャンデリアを設置しているほか
洋風のドアの上には御所の紫宸殿の右近の橘と左近の桜をあしらった飾りを用意していて「下部は洋風、上部は和風」を徹底しています。ここまでくると、え?そこまでする?感がないわけではありません。
旧議事堂も「下部は洋風、上部は和風」を徹底しています。やはり最上部は格天井で完全な和風、その格天井からぶらさがるのはシャンデリアですが
シャンデリアでありながら唐草模様があしらわれ、けっして純洋風ではなく和風を意識してると思わざるを得ません。結果としてよくいえば和洋折衷で悪く云えばごった煮の、説明のしようにも言葉につまる得体のしれない空間になっています。いまは会議室として利用されているほか貸室もでき、結婚式を挙げることも可能とのこと。
照明を吊るす金具がやはり唐草模様が目を惹くのですけど、傍聴席となっていた2階部分の上部には木製の和風を思わせる装飾が最下部にはタイルとおぼしき装飾があり、やはりここでも「下部は洋風、上部は和風」というルールが徹底されていて、正直笑うところではないのですがつい「ふふふ」となっています。
さて、戦前の設計当初は必要だったけど今は必要なくなった空間があってそこも公開されていて
それが戦前は天皇の写真を安置していた奉安殿があった正庁という場所で、戦後事務スペースとして活用していたものを再度復元しています。過去にこういうものがあった、という証拠を隠さず残しておくのは重要のはず。
ほのかに薄暗く、巧く撮れずに恐縮ですがやはりここも上部は格天井です。ただしシャンデリアは純洋風に近い印象です。
話がズレて恐縮なのですがもうひとつ戦前の設計に関連して書かなければいけないのが空調で
現在通路には空調がありません。ので、屋内でもあんまり涼しくはありません。ごらんの通り設置するスペースもなさそうで、職員の方に話を伺うと職務スペースは別として本庁舎の通路はほぼ外と同じとのことで、昔からあるものをそのまま使うことの難しさを一瞬なんすけど体感しています。もっとも至近距離に別の庁舎がありすべての業務を本庁舎で行ってるわけではないそうで、猛暑を前にちょっと安心しています。
話を元に戻すと屋上にも上がれたので塔屋を間近で見学しています。上部は和風下部は洋風だとするとこれがいちばんの和風のはずなのですが、いざ実際目にすると五重塔にもほど遠く「どこが和風なんだろう」感が。いまいち腑に落ちなかった疑問を口にすると、あー、(茶褐色の)タイルが木造建築っぽく見えるから?と彼氏が助け舟を出してなんとなく氷解しています。なお、この塔屋はキングの塔と呼ばれてて(左にある横浜税関がクィーンで)、近くへ来ても見上げるだけだったので横から眺めることが、なんかこう、不思議な感じがしました。
さて、県知事の執務室も見学しています。(鉄筋鉄骨コンクリ造でその必要性はないにもかかわらず)梁の下端に持ち送りの装飾があってここでもさんざん繰り返されている「上部は和風」の鉄則が貫かれてるのですけど、それよりも目がいってしまったのは・すべてを台無しにしてる感があったのが、毛筆で書かれた文字です。ガチで人の振り見て我が振り直せというかあんな字書きたくないなあ、せめて他人の目に触れそうなものはきれいに書くように意識しよう、と内心思いました…ってまじめに建築について書いてきたのに最後がそれじゃダメじゃん。