江戸東京たてもの園

西武新宿から西武線で西へしばらく行くと花小金井という駅があり、中央線でも西へしばらく行くと東小金井というところがあります。

その間にあるのが小金井公園というところで、戦前に皇紀2600年記念事業の一環として計画され、いまに至ります。そのなかにあるのが江戸東京たてもの園です。

現在展示されてるのがスタジオジブリの立体建造物展です。スタジオジブリの作品に出てくる建造物についてのデッサンや模型が展示されていて、藤森照信さんという建築の専門家が説明を加えてあります。正直に告白すると、ジブリの作品はカリオストロラピュタ以外はほとんどまともに観ていません。最後にみたのがもののけ姫で、それもえっちの前後にベッドサイドでみてた記憶が。ついて行ったに過ぎない予備知識がないやつでもなかなか見ごたえがありました。たとえば小さなものでもデザインがこと細かく指示・指定されてて、部分部分を細密にしておきながら、作品が成り立っているのがよくわかりました。イスとかのえらい細かなパーツについても指定がなされていて、指定どうりにきちんと描かれてたりってのがわかり、唸っちまうのです。
また会場には今回つくられた(内容は知らないくせして建物の存在は知ってる)千と千尋の神隠しにでてくる巨大な湯屋である油屋の模型が作品に忠実に再現されてあるのですが、油屋が脳内で作り上げられただけの空想上の建物ではなくて、実際の建物同様に緻密に考えられたものであり、基本的に再現可能であることが実際に理解できます。
もうひとつ、なんとなく理解できるのが、ジブリ作品に出てくる建物が純和風でもなく準洋風でもない意匠は真似たけどどうしても和風が残る洋風寄り和洋折衷の日本の建築がいくつもあることです。ジブリの作品を通していち時代の日本の建築が保存されているような気がしますって、建築学を勉強したわけではないのでへたなこと・おおそれたことは言えませんが。
たてもの園という名前の通り、東京にあった建物をそのまま保存しています。以下、そのうちのいくつかを。

小寺醤油店という白金にあった醤油店です。軒がそこそこ前面に張り出した、和風の商家です。どちらかというと、古くからの商店建築のスタイルです。

同じ商店でも神田にあった文具店と生花店なんすが、看板建築といいまして、関東大震災のあとに多くたてられたものです。軒がなく、表面をタイル(左)や銅板(右)で覆い、耐火性を高めています。神田にはいまでも看板建築の店があるんすが、私が学生だった頃に比べてだいぶ減った気が。

丸二商店という昭和初期の荒物屋(金物屋)さんです。銅板で覆ってある、洋風なようで洋風ではないでもなんかこうどこか洋風な、不思議な建物です。

長屋を残してもあります。小さなサイズの貸屋っていえばいいのか。

さすがに中は入れません。やはり日本橋や神田に何か所かあった気がするのですが、知らない間に消えていたかも。

千住にあった子宝湯。銭湯です。

銭湯でのお約束の富士山の絵。

女湯のほうにあったサルカニ合戦と思しき絵。もしかして子連れが多かったからか。

籐の籠なんて久しぶりに見たかも。でもって、銭湯も減りました。以前にあったものが保存しなければならない対象になってるってのはちょっとさびしい気もしますが。

信濃町にあった(中央線から見えた)デ・ラランデ邸という、風見鶏の館を設計したドイツ人建築家が増築した洋館です。

屋根がちょっと変わってて勾配が途中できつくなるマンサード式っていうのですが、小田急の向ヶ丘の駅にこういうのがあったのです。利点があるのかどうかはちょっとわからないのですけども、モダンだったのか。最近復元しました。中でお茶ができます。

ちゃんと見学すると1時間以上かかります。濃い施設です。
ちなみにジブリの建物に関する展示は来年3月まで延長となりました。