以前、シェイクスピアの十二夜を蜷川さんの演出で歌舞伎にしたものを観たことがあります。主演は尾上菊之助丈であったのですが脇役にもかかわらず長い芝居で観客を飽きさせず主役を喰いかねぬ動きをしていたのが当時市川亀治郎と名乗っていた当代の猿之助丈で、以降、気になる役者の一人です。全ての芝居を観ているわけでもないので推しとか贔屓とか云えるほどではありませんが、亀治郎時代に信玄公役で出ていた「風林火山」を再放送していた際にNHK甲府局が甲府駅北口に看板を出していて、しかし亀次郎表記になっていたので「なんぼなんでも」と間違いを帰りの特急まで時間があったので甲府局に指摘しに行ったことはあります。数年前は実力があってもそれくらいの扱いに過ぎず、完全に他人事なのですが「悔しいなあ」と思っていました…って芝居に関係ないことはどうでもよくて。
話はいつものように横に素っ飛びます。
三谷幸喜という名を知っていても古畑任三郎以外はあまり知らずにいた時期が長かったのですが、数年前に三谷作品の「月光露針路日本 風雲児たち」という歌舞伎を観ています。コメディになりかねぬのをきちんと芝居に仕立て上げ、飽きさせず、すげーなーと思いながら眺めていました(どんな話かは是非シネマ歌舞伎か映像作品でご確認ください)。どのように三谷さんが猿之助丈にアドバイスをしたのか知らぬもののその芝居で(当代の幸四郎丈が主演なのですがその)主演を喰いかねぬ程度の怪演だったのがやはり猿之助丈です。
だもんで、坂東彌十郎丈が重要な役回りで出るのは知っていたので視るつもりでは居たのですが三谷さんが脚本を書いて猿之助丈が出ると知ったらハズレなわけがないだろうと期待度が上がり、いまのところ第1話と第3話しか視聴できていませんが今冬は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」を録画の上視聴しています。第3話では良い意味で曲者の役者である大泉洋さん演じる頼朝と猿之助丈演じる文覚上人の対面のシーンがあり、最初息をのみ、その後思わず吹き出してしまったのですが、おのれの目の黒いうちにそんな組み合わせをテレビで視聴できるなんて(四十半ばを過ぎた程度ですが)長生きするものだなあ、と本気で思ってます。内容はある程度途中まで予想つくものの、猿之助丈がどのように芸達者な人たちを引っ掻きまわしてくかが気になってしまい、この先大河ドラマが終わるまでうかつに死ねないです。
以下、鼻先で笑われそうなことを。
第1回で(彌十郎丈演じる)時政公が「最後は首ちょんぱじゃねえか」というセリフの後に「なんだよなあ、せっかく正月と三島のお祭りが一緒に来たっていうのに」と横になり手をばたつかせて嘆くシーンと、第3回で(猿之助丈演じる)文覚上人が川で溺れるシーンがあるのですが、彌十郎丈も猿之助丈も腰を中心に全身で演技をしているように見えました。第3話では(西田敏行さん演じる)後白河院が(大泉さん演じる)頼朝公の夢枕に立ち頼朝公が揺さぶられるシーンがあるのですが(これは先行して公開された作品のセルフパロディであることを後で知ったのですがそれはともかく)そこでは大泉洋さんは肩や顔を中心に演技してるように見えました。彌十郎丈、猿之助丈や大泉さんに限らず、どっちが良い・どっちかが鼻につく、という問題ではないのですが、今回の大河ドラマは出演する役者の演技に関しての身体の動かし方の違いというか出身畑の差異が如実に出ている気がしてならず、興味深いです…って、あまり大河ドラマを見てないので下手なことはいえません。
余計なことを書いてボロが出る前にこのへんで。