9月場所見学

私は華奢な体つきで、体格に恵まれませんでした。男ですからケンカってのはあったのですが、華奢であると傍からみるとあんまり勝ち目はありません。体格差があるときにどうやって勝つか、といったら技です。私の場合は目が悪いので怖さがないせいもあってヘッドロックへ持ち込んで、たいていそれで勝っていました。技、というのは身を助けます。けんか以外で相撲をテレビで観ていて、それを実感したのが必ずしも巨漢力士でなかった舞の海です。世の中若貴時代であっても小兵力士であった舞の海をずっと気にしてチェックしていました。たとえ傍からみても不利であっても、やりようによっては勝ちに持ち込めるというのを身をもって示してくれてたからです。余談ですが、そのあと興味を示したのが高見盛です。やはり彼もまた巨漢力士ではないのですが土俵際で体が入れ替わり逆転勝ちを収めることがあり、引退までずっとチェックしていました。相撲というのをそんなふうに、技さえあれば逆転できる・劣勢でも可能性はゼロではない、という見本のようにみていました。そんなてめえのはなしはともかく。

でもって両国国技館での9月場所を見学してきました。テレビではない観戦ははじめてです。9月が忙しくてちょっと息抜きしたかったのと、今夏京都の五山の送り火をきっかけに浴衣を新調してて今夏の着納めを兼ねて和装デーの存在を知って和装で相撲見物も悪くないなあという目論見で、チケットを2枚とったのです(あんだけ抵抗していたのに、ってのは云われましたが)。残念ながら東京は浴衣では肌寒くなっちまって、普段着での観戦になっちまったのですけども。

念のため書いておきます。国技館の横に案内所、というのがありますが、ここにあるのが相撲茶屋というシステムです。今回はぴあでとっちまいましたが、チケットの手配とお弁当やお土産を相撲茶屋を通して依頼することもできます。その場合、相撲茶屋の人が席まで案内してくれます。相撲というのは興行に近いのだなあというのを思い知らされる、なんかこう、不思議なシステムです。

座ったのは8000円程度の2階のイス席です。取り組みが見えないわけではありません。値段のことを書いておくと、いちばん安い2階の自由席で2200円から、1階のいちばん安い升席が9000円くらいから。もちろんをオペラグラス持参しましたがなくてもなんとかなるかも。建物が響きやすい構造なのか、力士の人がまわしとか腰回りをパンってたたきますが、あれが案外ひびいてました。響くといえば、柝(き)がやはり歌舞伎と違っててやわらかく感じました。でもって取り組みは朝8時半くらいからはじまっています。一般的な相撲のシステムを書いておくと、前相撲といいまして番付に載らない力士同士が対戦して序の口にあがり(このあたりの対戦は9時前くらいからはじまる)、序の口から序二段、三段目、幕下と出世します(学生横綱などの場合は幕下からはじまる優遇制度があります)。幕下までが力士養成員といい、関取の付け人をしたり料理版をしたり、妻帯はダメなどの制限があります。幕下から十両に上がると「関取」とよばれるようになります。化粧まわしを身につけて土俵入りをします(だいたい2時代)。地上波NHK総合では3時くらいから中継しますがそのころやってるのがたいてい十両の取組です。

土俵のほか、見どころもあります。1階エントランスにあるのが幕内優勝した力士に送られる賜杯などを飾るコーナーです。

賜杯のほかに、けっこう副賞があります。福島県からお米、大分県農協からしいたけ、(酒は大関心意気のほうの)大関から清酒等が贈られます。そういや優勝力士が巨大な杯で飲むお酒って、横綱でも大関ですね。

建物南側通路では力士の見送り、出迎えができます。さきほど幕下までが力士養成員と書きましたが、十両になると着物が着れます。着物を着てるのが十両以上の関取で、浴衣の人が十両以下の力士です。

関取でなくても、でかいなあ、と思えました

あんまり派手にパシャパシャ写せなかったのですが、なかなか粋っていうか、あれいいなあ、って思える浴衣を誂えてる力士がおおいです。丈が長めかな。

国技館名物の焼き鳥です。相撲は手をつくとNGという理由から2本脚の鶏が蔵前国技館では縁起物で、両国に移ってからも変わらずに食されています。つか、おそらく蒸してから焼いてると判断してるのですがけっこうやわらかく、でもってタレもおそらく酒もしくはみりんを下味に使ってるのか微妙にあとに残る味で結構うまかったです。館内で売られてる酒は月桂冠です。陽の出てるうちから飲酒しながら見物していました。デートでも酒はキスするときにおいますが、相手も同じ酒飲んでるのならあんまり関係ありません。

ちゃんと相撲のことを書いておきます。勢とか遠藤とか大砂嵐とかいわゆる人気力士がでてきたときの歓声と、ガチンコ勝負というかよそ見ができない熱戦というかいい相撲をとった力士に対する会場全体の集中力と声援と惜しみない拍手ってのは、ちょっとすごかったです。テレビよりは会場の一体感があって良い体験をしたかなあと思ってます。でもって、小兵とまではいわないけど、体格的に劣勢な力士が重量級の力士を技でカバーしながら負かすとうおおおおおおおお、とやはりなっちまったり。その痛快さがあるから相撲ってつい、みちまいます。まともに見ていたのは3時間くらいだったのですが、それでもあっという間に過ぎちまいました。いいものみたぞという興奮をそっと仕舞って、間違ってない、と若干前向きになりながら、秋分の日を終えました。

すべての取り組みが終わって外に出ると夕闇の中、やぐらの上からはね太鼓の音が。足を止めてつい見上げちまったのですけど。