早起き(というほどでもないかもだけどけど)して渋谷へ。

ヒカリエという再開発ビルです。プラネタリウムと本屋と映画館が入った東急文化会館の跡地にできました。ヒカリエになってからは低層部が東急系のショッピングセンタ、高層部がオフィスになってて先行開業しています。まだ完成してませんが夏前には劇場ができます。

アーバンコアと呼ばれる吹き抜け。吹き抜けをつぶすようにエスカレータが組まれてます。エスカレータで地下3階から地上4階まで行けます。実は最初は建物の中のエスカレータもしくはエレベータでもって上層階へ行こうとして、あまりの人手におそれをなして引き返し、こっちで途中までゆきました。でも案の定4階から上への建物内のエスカレータも行列ができてて、ヒカリエの人気の高さがうかがわれますってかけば優等生的レポートですが、なんだろ、かなり狭いスペースにめいっぱい店舗を詰め込んでるのか通路が狭いのとエスカレータがわかりにくいところにあったりして、かなりの混雑に一層拍車をかけてる気がしました。非常階段も開放して誘導してたのですが、ダイジョウブなんかなあ。

目的は上層階でやっていた市川亀治郎博覧会です。亀治郎さんはもうちょっとすると四代目猿之助を襲名する歌舞伎役者です。何年か前の大河ドラマの信玄役の役者さんといえば話がはやいかもしれません。内容は主に亀治郎さんが立ち上げた亀治郎の会での義経千本桜の一場面にまつわる映像と資料、義経千本桜・河連法眼館の段のセットが組まれてました(ケータイなら撮影OK)。さらに澤瀉屋(とかいて「オモダカヤ」と読む)の歴史やゆかりの品物の展示です。

通称四ノ切(しのきり)というのですけど、狐が重要な役割を果たします。で、その狐が空を飛ぶシーンです(この説明で意味が通じるか不安なんすが詳しくは歌舞伎をみてもらうしかないかも)。いまさらっと空を飛ぶと書いたのですが、劇場で役者さんが宙づりになります。でもって宙づりに限らずみてる観客をあっといわせる演出を(←非常にアバウトな言い方なんすが)歌舞伎の世界では「けれん」といいます。で、3代目猿之助丈はその「けれん」というのを比較的重要視しました。亀治郎丈も意識してるようで、でもって四ノ切のメイキング映像が会場で放映されてたのですが、「狐というのは人になれるということはない用心深い性質を持つ」というところから演じる狐像を作り上げ、また人間ではない獣らしさを台詞まわしに残しながら演じてて、そこまで深く掘り下げて、さらに先代猿之助同様「けれん」というのを重要視してるわけで、亀治郎版四ノ切はちょっと濃密な舞台だったんだろな、ということが容易に想像できました。
印象深かったのは「気配」の説明です。狐が人に化けてるのですが、狐でも狐をストレートにしては良くなくて、人を演じながら「狐の気配」をうっすら出さないとまずいかったりします。で、「なにかいるけどあらわさない」という気配の説明を浮世絵に絡めて説明してて、唸らされた次第。広重などで風景を描いた浮世絵でなんとなくひとが居る気配はあるんだけどその人を描かないというものがあったりします。ぴんときたというか、なにをいわんとしてるか判ったのですけど、やたらと語彙の引き出しが多い人だと思いました。

舞台セットのうしろからの図。早変わりといって素早く着替えてあっとおどろかせる演出があるのですが、ある場面では武士の姿から狐になって(着替えて)出てくるんすけど、この滑り台のようなところをすすーっと降りてゆくようで「ああ、こうなってたのかああ」と思って撮った一枚。ちょっと降りてみたいところですがそれはできない相談で。

なぜかあった天竺徳兵衛に出てくる蛙。
ほかにも自筆の書であるとか(これがほんときれいな字)、コレクション(それもさらっと川喜田半泥子とか魯山人がある)とかもあってちょっと興味深い展示でした。
ちなみに9日まで。
ついでにヒカリエからみる渋谷のまち。左からセルリアンタワー、道路は首都高、白い建物が東急東横、右の高い二棟がマークシティです。

(既にちょっと窓が汚れてました)

偶然地下鉄が東横店から出てくるところを見つけてテンションが上がってケータイで撮る30代男子。同じ30代でも亀治郎丈との差が歴然です。



ヒカリエのすぐそばにあるクロスタワー。以前は東邦生命ビルといってて、歌手の故・尾崎豊氏が通ってた場所です。なんだろ、夜の校舎忍び込んで窓ガラスを夜に割ることと逆らうこととの関連性が判るようで本気でわからなかったので(逆らうんだったら人前で昼割ればいいじゃんよーと本気で一時期思ってた)いまいち深入りしなかったのですが、尾崎さんのストレートに出す感情吐露というのがどうも苦手なのではないか、としばらくして気が付きました。じゃあ歌ってなんなんだろとか・てめえはどうなんだよ感情吐露しねえのかよとか、ここへ来るとわけのわかんない方向へ話が行っちまうのですけども。
まだちょっと時間があったので、坂を上ります。

先に見える森が金王八幡宮という神社で(ブラタモリでも出て来た)渋谷に古くからあるやしろです。

関東の神社のいくつかには不思議な(勝手に私が不思議がってるだけなんすが)絵馬がありまして、幾何に関する問題と解法と答えを書いて奉納してあるのです。最近になって算額といって数学の問題が解けたことを神様に感謝するためのものと知ったのですが、この金王八幡にもあります。なんとなく数学に限らず難しそうなことが解けた時、神様に感謝したくなる気持ちはわからんでもないっす。なんとなく抱えてる難問が解けるようにと参拝しました。とくのは自分であって神様じゃないんすが、たまーにこう、ちょっとでもいいからなんとかなんないかな、みたいなところがあるのが私の弱さです。

この写真ではわかりませんが銀座線渋谷駅で、青山方向をみたところ。はい、渋谷が最終目的地でもなんでもなくて、今日も寄り道でした。向こうが見えないけど、なんとなく光さす出口がみえてる、ってのが好きで渋谷から銀座線に乗るときはわりと運転台のうしろに陣取ります。だからなんだってわけでもないのですが。


以上、あいかわらずの、テーマのない寄り道の記録でした。