他人にはいえない小さな趣味、というのがあります。いえない、というよりも理解されそうにない、説明がしにくい、というほうが正しいかもです。今年の二月に奈良・唐招提寺に行ったときに光明皇后筆による唐招提寺の額というものが飾られてあって、ああほんとに実在した人なんだという妙な感慨とともに、力強い筆遣いだったので、妙に印象に残りました。というより、かすかにひっかかりました。あたりまえのことですが、昔はパソコンもありませんからすべて手書きです。でもって、昔の人の字というのを見るのは面白いのではないか、と思いはじめました。そんなところに経典や歌集を切り刻み、床の間飾りや手鑑という筆跡コレクションなどをあつめた古筆切というものの展覧会があることを駅貼りのポスターで知り、出かけついでに筆跡目当てで南青山へ行きました。
やはりちょっと人には動機が説明しにくいんすけども。
場所は根津美術館東武電車の創業家一族のコレクションが主体の美術館です。

さすがに実物は写真に撮れないのでさらっと書きますが、光明皇后の筆遣いってのは堂々としてて立派なんすが、旦那さんの聖武天皇の筆というのがなんかこう、まじめさが滲み出てるのですが、迫力がないのです。性格が筆に出るのかどうかはわかんないですが、うーんどういう人たちだったんだろ、ってのがすごく気になりました。あたりまえかもですが、紀貫之の筆はどれも流麗で、西行法師の筆はなんかこう想像どうりへにゃへにゃというか、すこーしだらしがないというか、あーなんとなくそうだろうなー、というのがありました。もう千年以上前の人のものがあったりしたわけですが、手書きというのは妙になんかこう、迫力というか、生々しさがあるような気がします。そして書いてある内容がよくわかってないのにこんなこと書くのは変すけど、あー有名人の筆というのは鑑賞に値するのだなあ、というのがよくわかったというか。

でもって、庭園が見事です。こんなところに緑深いところがあるんかあ、と少しびっくり。