上野散策

2日は上野へ行ってました。
上野駅の公園口をでるとすぐそばにあるのが、国立西洋美術館です。

建てられたのは戦後なんすがこれを世界遺産にしようぜ、って話があります。主に云ってるのはフランスで、これがフランスの建築家コルビジェの作品であるからです(ただし実際の細かい設計は日本人が行った)。コルビジェってひとは伝統から離れ、合理性を重視しました。装飾があちこちに施され石積みの建物が主流であった20世紀前半の欧州において、この西洋美術館のように無駄な装飾を廃して機能的な建物を作ろうという発想で設計を手がけました。ここも予算の都合でそこまでできませんでしたが無限に増築可能な基本設計でした。唸らされるのは築50年以上を経たいまでもさして古さを感じさせません。
で、わりとコルビジェ放射能は強くて日本の建築も影響うけてます。いまではあちこちにあるコンクリの打ちっぱなし、なんてのも関係ないわけではありません。でも、建物は独立した芸術なんだろか、ってことにも関係してくるのですが、既存のデザインと並べたとき機能一辺倒の建物は確実に浮くのです。ここの場合建物自体が見るべきほどのものとして作品として成り立ってて、まわりに森しかない上野の森の中にぽつんとあるので気になりませんが。建物は建物として独立してみるべきものなのか、周囲と調和したほうがいいのか、ってのは、答えはないかもっすけど。
能書きはともかく建築史を語る上で、ちょっと重要な建物であるはずです。


上野の森はほかにもよい意味で個性的な建物がいくつかあります。
その筆頭が↓これ

昭和初期に立てられた東京国立博物館です。当時の宮内庁から日本風にしろ、もしくは東洋式にしろ、勾配屋根を作れ、っていう条件をつけられて当事の建築家がひねり出したプランがこの、和のほうに偏った和洋折衷というか、鉄骨鉄筋コンクリート造の重厚な建物に瓦葺屋根、窓相当部分も日本風というなんともいえない力強い不思議な外観です。俗に帝冠様式とも呼ばれてます。でもって、中に入るとわかるのですが、この建物のちかくに表慶館というネオバロック様式の建物があります。それとはぜんぜん調和が取れてません。建物は建物であって独立した作品で、好き勝手に建てて調和が取れなくてもいいじゃん、ってのは戦前からの伝統かもしれません。


へーこんなものあるのか、ってな具合でぜひ見学してほしいのが、

国際こども図書館です。国会図書館の分館になります。

(新しく建てたほうが安くつくはずですからいまだったら無駄な公共事業として仕分けされちまいそうなんすけど)20世紀初頭に建てられた帝国図書館を壊さずに再利用・現代風にアレンジしてます。正月なので外からの写真しか撮ってませんが写真の後ろ側にガラスを多用した増築部分があります(メンテナンスが大変そうですが)。すでにある古い建物をどうやってもう一回息を吹き込むか、っていう点で稀有な成功例だと思ってます。
森があるから気になりませんが、でもやはりちょっと変な建物です。もし、上野に森がなかったら、不思議な建物が並ぶ、へんな場所になってたかもしれません。




東京芸大上野動物園の外側をなぞるように歩くと下がるのが清水坂です。

右が上野の山のがけです。上野が山だーってのがよくわかるかもしれません。左は変電所跡。
ところでこの界隈に温泉があります。

森鴎外の旧宅あとが温泉になってます。旧宅といっても観潮楼ではありません。ここで舞姫を書いてます。
全然関係ないですけど、恋を取るか仕事を取るか、ってのは誰でも考える話ですけど、なんで恨み節ともとれるもの書いたのだろう・わが身の恋路を振り返って書いて発表するのはけっこう勇気がいるんじゃないか、なんてゲスな勘繰りを以前はしてたのですが、心中にひとりでじっと抱えすぎるにはしんどくてでかすぎる問題だったのかなー、なんてよりゲスな勘繰りを今ではしてます。しんどさ、誰かわかってくれるんじゃないか、なんて一縷の望みを抱いて書いたのかもしれません。書くことってなんなんすかね。たまに考えちまうのですが。

以上、かけあしですが上野山に寄り道してました。