嫉妬1

白雪姫にでてくる魔女というか継母は「世界で一番きれいなのは誰?」と鏡に訊きます。当然「白雪姫です」ってこたえます。それに怒って白雪姫殺害を企てるわけっす。で、ずいぶん前に歌舞伎座で白雪姫を演目として掛けたのですがそのときは市川團十郎丈がその役をやって印象的だったんすけど、どこか迫力ある団十郎丈の演じる魔女をみてから自らがきれいと信じてる場合、他のキレイな存在ってのはやはり妬ましいのだろうな、なんてつらつら考えてました。
富士山に祀られてるのはコノハナノサクヤヒメなんすけど、自分よりキレイな背の高い八ヶ岳の神様(イワナガヒメだったか)がきにくわなくて嫉妬して喧嘩になって頭を叩いたから八ヶ岳は今みたいな姿になった、っていうのを別の機会にきいたことがあります。嫉妬って神様でも超越できないんかー、嫉妬ってすごい感情なんだな、とそのときは思ったんすけども。


白雪姫はころされそうになるのですが、嫉妬って周囲が振り回されて大変なんすよね。
生まれ育った街から数駅行くと弁才天さんがいる池のある公園があります。で、弁才天は女性でなもんすから、カップルで井の頭に行くと弁財天が嫉妬してそのカップルは別れる、って言う話があるんすよ。もしくはキレイなデート時の女性に自分が美人だと思ってるかもしれない弁才天は嫉妬して恋路を妨害するのかもですが。私が育った街やその周辺の人間はそのことをどこか意識してて、デートスポットとしてそこをちょっと避けよっか、みたいなところがあります。弁財天を気にしてるってことは崇拝の裏返しでもありますが、ほんと日本は神の国っていうけど、日本の神様って空気みたいになにげなく日本人のなかに影響を与えてる気がします。潜在的にけっこう多いはずのその公園にいけない弁才天が怖いチキンなカップルはどこか神様や神様の嫉妬を信じて振り回されてるわけっす。


もっともこれらのはなし、神代の昔から嫉妬深い人ってたぶんいてそれを弁才天や魔女やコノハナノサクヤヒメに投影した作り話で、嫉妬深い人ってどこにいるかわからないから注意したほうがいいよっていう、遠まわしの古人の警告かもしれないっすが。