「刑務所がいい」 法相「社会復帰促進センター」に不満
2007年09月08日朝日新聞より転載

民間の資金やノウハウを利用する「PFI方式」の刑務所として法務省が全国で設置を進めている「社会復帰促進センター」のネーミングに、就任直後の鳩山法相がかみついた。7日の記者会見で「ネーミングは絶対『刑務所』のほうがいい」と注文。懲らしめるという印象が薄いことに違和感があるようで、見直しを検討するという。
同省は、4カ所にセンター設置を計画。刑期の短い「初犯者」らを集めてPFIで運営するのが特徴で、鉄格子ではなく強化ガラスを使うなどの設備が注目されている。
第1号として4月に開所した山口県美祢市のセンターを5日に視察した法相は、環境の良さに「受刑者にも人権があるからいいが、行き過ぎるとね」と不満な様子。「実刑判決には懲らしめの意味がなければならない。悪いことをするとつらい思いをするという方が再犯防止に意味がある」と述べて、「刑務所」と呼ぶべきだと強調した。

刑事施設には,刑務所と拘置所があります。
拘置所には主に勾留中の被疑者や被告人が収容されています。拘置所は被疑者・被告人が逃走したりとかしないための施設です。建前は被疑者・被告人の正当な防禦権を守り公正な裁判を受けられるよう配慮します。
刑務所は拘置所と異なり、刑が確定している受刑者に刑の執行を通じて改善・更生を促して社会生活に適応する訓練(≒刑務作業)をすることを主に目的としてます(禁錮刑でも希望すれば刑務作業に参加できたはず)。
この記事は刑務所に関しての話です。

刑罰ってなんだろうというのは古くて新しい問題です。刑罰の本質は応報として科せられるものである、という考えもありますし、また、反社会的な性格の人を改善して教育する手段という考えもできます。社会に対して戒めて刑罰で犯罪を予防するという部分もありますし、犯罪を犯したものの再犯の予防ってのもあります。で、「悪いことをするとつらい思いをするという方が再犯防止に意味がある」というのは必ずしも否定できません。
が、それほど単純ではないのです。
で、法務省の場合、刑務所を管轄するのは「矯正局」です。どちらかというと、「刑務所≒刑の執行を通じて改善・更生を促して社会生活に適応する訓練施設」なので、矯正局なんです。おおもとは江戸時代の「石川島人足寄場」にさかのぼるんですけど、改善・更生というか社会復帰を図るための施設なんすよ、本質は。刑務所へ二度と戻ってこないように訓練するのが再犯防止に役に立つって発想が根底にあります。薬物依存の受刑者にはそのプログラムがあって依存症から離れる支援をしますし。今回の「社会復帰促進センター」もその延長線上のはず。
刑務所≒「懲らしめる」というのは今まで法務省がやってた思想と微妙に方向は違うといえば違います。

今までの刑務行政を知らなかったか、もしくは知ってて刑務行政が不満なのか判りません。
ただ、なんだかとんでもない大臣が就任しちまったのかな、と思えます。