ブレア首相引退

ブレア首相、退任間近にバチカンを訪問

10年にわたり国の舵取りを担って来たトニー・ブレアTony Blair)英首相は自身の退任4日前となる23日、バチカンを訪れ、法王ベネディクト16世と面会した。英国国教会に属するブレア首相は退任後にカトリックへの改宗が取りざたされており、6月27日にゴードン・ブラウン(Gordon Brown)英財務相へ首相の座を引き渡した後の活動について、精力的に準備を進めていると言われている。
英首相には英国国教会大主教を選出する役割があり、カトリック教徒が首相に着任した前例はない。
面会後にバチカンが発表したところでは、両者は中東問題や欧州連合(European Union、EU)などの繊細な課題について話し合ったとされ、ブレア首相の改宗については言及されなかった。ブレア首相による退任直前のバチカン訪問について、タイム(Times)紙などは、キリスト教イスラム教、およびユダヤ教など、宗教間で対話を目指す同首相が、退任後の活動についてローマ法王に協力を求めるためとしており、改宗に関するものではないとの見解を示していた。
ブレア首相がバチカンを訪れたのは今回で3度目で、ベネディクト16世と面会するのは今回で2度目。

2007年06月24日 AFPより転載


政治に詳しくないのでさっぴいて聞いてください。
ブレア首相が登板する前は市場原理を重視したサッチャーリズムが英国を支配してました。それが上手くいってなかったわけではないのですが、保守党はブレアの労働党に敗れます。10年前のことです。ブレア首相がどこがすごかったかというと、旧来の福祉国家でもなく、かといって国があまり介入しない自由放任を是とする「小さな国家」でもない、別の国家像を打ち出したところです。適度な競争社会を維持しながらすべての国民がステークホルダー(利害関係者)だとして具体的には教育の再生や子育て支援、若年失業者の就労支援など(どこかの国が表面的に今なぞってますね)、弱者に対して自立支援策を次々と打ち出しました。「機会の平等」を強く打ち出して、福祉依存ではなく、就労による自立を国民に求め、そのために税金を投入しました。



で、英国では以前は同性愛は刑罰の対象でしたが1950年代後半から道徳観念の非刑罰化の動きがあり議論がはじまり刑罰の対象でなくなり、ブレア政権下では同性愛のカップルに異性婚と同等の権利を認める「同性パートナーシップ民事制度」というのが成立してます。いわゆるキリスト教文化圏で非道徳的とされていたものがほぼ50年たって社会的に認められた、わけです。たぶん社会を揺るがす大変革だったと思います。
報道によると心情的カソリックであったらしいブレア首相がこの制度をどう思っていたかわかりませんが、内心相当抵抗があったのではないかと推測します。自ら掲げた「機会の平等」という政策をつらぬき、実現させたというのはすごいこととおもいます。思想信条、宗教観が違っても、それを越えて、というのはなかなか出来ないと思うのです。
よその国のことですがこのニュースを知って、惜しい人が引退する、と、漠然と思いました。