利息のこと

首都圏だと良く駅頭でティッシュを配ってますが、もしそれがあったら手許においてください。
利息の話です。


なぜ、お金に利息がつくのか、実のところ巧い具合に説明はつきません。国によっては確か、イスラムの国のいくつかでは利息がつかない、というのを聞いたことがあります。貸すほうは与えることにより喜びを得る、富める者が貧しき者に対して財産としての利息をを喜捨するという発想らしいのですが、よくはわかりません。倫理観からすればこのイスラムの発想というのは当たり前のような気がしますが、理想論的すぎるでしょう。現実には物を借りるときに土産を持ってくようなプレミアをつけることがあるのと同様に、たぶん、資金を必要とする人が利息というプレミアを提示して借りようとするところにあるのかもしれません。

日本の民法の世界だと利息は元本を借りてることの対価というか、使用料という位置づけです。ですから、仮に3000円の利息で100000円の返済を待ってくれる、という言い方が決して間違ってるとは言い切れない側面があります。本質的には3000円の菓子折りを持って物を借りに行くのに近いかも。で、遅延損害金というのは契約を履行しなければいけないときに返済できなかった時に生じる損害賠償で、利息とは微妙に違います。えっと、明日返さねばならないお金を明日返せなかったときに発生するのは遅延損害金です。返済予定日以降は利息は原則つきませんで、遅延損害金のみ発生します。利息は返す日までのことです(ややこしいのですが利息という言葉が遅延損害金を含む場合もあります)。


で、民法の場合、利息って無利息なのです。合意があったときのみ利息が発生します。利率についての合意がなければ民法の場合は5%です。
サラ金ティッシュにはもっと大きな数字が載ってると思います。民法の利率で貸したりはまずしません。

日本には利息を制限する法律が2つあります。「利息制限法」と「出資法」というもので、この2つの法律は異なる利息を上限としてます。かつ、併存してて、これが混乱や誤解を招く原因になっています。
利息制限法はお金を貸した人が、借り手から受け取ってもいい利息の上限を定めている法律でして元本に応じて次のように上限が定められています。
元金10万円未満 20%
元金10万円以上100万円未満 18%
元金100万円以上 15%
で、出資法というのは元本に関係なく、年利29.2%を超える金利で、お金を貸すことを禁止する法律です(日掛け金融というのを除く)。

利息制限法は民事上の契約として無効となる金利でして、これ以上の利息で貸すと原則その取引は超過した部分が無効です。
出資法刑事罰まで科せられるほどの違法金利、と分けて規制しているのが現状です。高金利で貸したほうが御縄頂戴になります。
あくまでもこれは建前の話です。


判りにくいんですが、政策上高金利業者を闇にはびこらせないために、いわゆるグレーゾーンというのがありました。
利息制限法の法定利息以上であったとしても、利息制限法を超過した利息を借りたほうが任意に弁済して、かつ、貸主が受取証書を借主に交付することなどを前提に、出資法に規定する29.2%までの利率の利息の支払いは有効であるというふうにしていました。事実上条件付で利息制限法以上の利息でもオッケイ、だったわけです。また。貸主側から利息制限法を超過した利息の裁判上の請求はできませんです。
あくまでも借主の任意の弁済とかが前提ですけど、簡単に言うと利息制限法の上限利率と出資法の上限利率の間の金利で貸金することはでき、29.2%の利率の利息の貸金は問題がありませんでした。


からくり、少しはわかっていただけたでしょうか?




じつはいま、このわけのわかりにくいこの利息に関する法律を変えようという動きがあります。いわゆるグレーゾーンを無くそうというとしています。
妙な話ですが、例えばあなたの持っている自転車を誰かが借りたいといったときに、見ず知らずの人に貸すでしょうか?
プレミアの話につながるのですが、たとえば、赤坂の虎屋の羊羹だったらどうでしょうか?プレミアが。
利息というのは今のたとえで云う羊羹みたいなものでして、それを規制するのは多少問題があるとおもうのです。
貸すほうからするとちょっと無視できないくらいのプレミアがあったから、という理由で貸してたのにそれを規制したらメリットはないわけです。ヘタしたら。
信用はないけど29,2%のプレミアの可能性があるから貸していたのに、同じ信用で15%しかないんだったら、ということになりかねない。
お金が必要なときに充分に行き渡らない可能性が出てくるわけです。

私はいまのところ借金というのはないのですが、この時期に見直す必要というのがあるのかな、とはおもいます。




後日追記→誤解を生みそうなので付記します。えっと、利息制限法上限金利を超えた部分について、可能性の問題として払った利息は戻ってこないわけではありません。


原則として年利29,2%までは罰則が科せられないし、債務者が任意に支払った額が利息制限法上限金利を超える場合であっても、一定の要件を満たす書類を債務者に交付していれば、その支払いは有効ですし戻ってきません。
しかし29,2%の金利を裁判所等がハイソウデスカと認めるのはまれです。詳細は省きますけど認めるその要件が大変厳しく、同時に立証責任(その部分について、争いになった場合にどちらが自分の言い分が正しいかを立証しなければならないか、という民事訴訟上のルール)が貸主の側にあるので裁判にはしたくない。裁判にしたら負ける可能性が高いけど、要件を満たしてるものと仮定して、借主が任意に高い利息をわざわざなにもいわずに付けて返してくれてることがほとんどだからという理由で高い金利での貸付を行っているわけです。建前として。


借りてるほうからするとそこに目を付けることが可能です。
ただし相手の懐に乗り込んで利息制限法の上限金利に利息負けてくれといっても応じることは稀でしょう。実は金利の引きなおしというのですが代理人をたてる必要がありますです。仮に利払いが苦しいときには、弁護士事務所に相談するのも一つのテであります。