頭のいい人の考えること

株式というのは不思議な世界で、株価が下がっても儲けようと思えば儲かります。空売りという手口があって、ある株価600円の会社の株価がさがると判断したとします。そこで証券会社から株券を1000株借り、証券取引所を通じて借りた株を1000株600円(60万円)で売却し、その後、株価が予想通り500円にまで下落すると証券取引所で1000株500円(50万円)で買い戻し証券会社から借りている1000株を証券会社に返却すればいちおう儲かります。株価が下がると思った局面ではそういう取引があります。

でもってある会社が必要があって、株式を新たに発行して資本を増やしたいとします。借入金でも可能なのですが、借入金は金利が付きますから、できれば株式を新たに発行して(適宜配当はするけど)返済の必要のない資金を得ることがあったりします。たとえば航空会社が増資をして、最新鋭の燃費の良い飛行機を大量に購入しておきたいときとかです。そこで証券会社に相談し計画を立てて公表します。増資の手続きは証券会社が行います。この会社は成長するぞ、と思った投資家は長期的に考えて増資に応じようとします。前向きの投資なのですが、株価はわりと一時的に下がります。要因としては株式の希薄化というのがあります。増資をして新たな投資をするとそのうち利益が上がるかも知れませんがあくまでもそのうちで、しかし株数は増資が実施された瞬間に増えてしまうので理屈の上では一株当たりの利益などは下がるからです。短期的な投資家はそこを素早く見極めて儲けようとします。

ここでもし、事前に増資の情報を得てたとするとフェアではないけど株を借りて空売りしたくなります。ほぼ確実に儲かるんすから、これほどおいしい話はありません。しかし増資の判断をした会社の経営陣や取締役はそんなことはやってはいけない原則です。株式事務を取り扱う証券会社の担当部署も同じです。第三者にも洩らしてはいけません。証券会社の場合、株式事務を引き受る部門と株式売買の営業の部署が同じ社内にありますが、それぞれの部署が接触しない・情報を洩らさないことが前提になってます。会社としての信用の話になってくるのでその接触しない・情報を洩らさないルールを頑固に守ってる証券会社もあります。が、残念ながら守ってない・頻繁に重要な情報を洩らしてフェアでない取引を誘発した会社がでてきちまってます。具体的には増資について社内から洩れた情報をもとに営業部門の人が第三者に教えて儲けさせて、なんてことをやってました。くりかえしになりますが、これらはアウトです。この問題が深刻なのは、やっちゃいけないことをやっていたことよりも、やっていいこととやったらよくないことの判断ができない・置かれてる状況やルールの背景を十分に理解することが出来ない会社が日本の証券会社にある、という印象を対外的に与えてしまったことです。じわじわとこの先影響が出てくるのではないかな、と思います。


大手証券会社というのは頭のいい人が就職するのではないか、と思うのですが、頭がいいということと、フェアなふるまいをする、というのとはどこか違うんだなあ、と日経のインサイダー不祥事に関する記事をみて思ったのでした。