読書感想文『金閣寺』

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺 (新潮文庫)

金閣寺を燃やしてしまう禅僧の子供時代からの生い立ちをつぶさに追って、その変遷や葛藤や苦悩や快楽を描いています。金閣寺に対する憤懣が彼の心に巣食い、彼を蝕んでいくところが丁寧に追われています。認識以外に生を耐え得る方法があるとすれば狂気か死かってのは、しかしそれ以外選択肢はないのでしょうか。
余談ですが以前読んだ刑法の本に、三島由紀夫は刑訴をやってて形式的なことを研究していた、実質的な刑法の法解釈理論に彼は行かずに刑訴の形式的なところへ行ってしまった、で、刑法に進んでくれてたら自殺に至らなかったのではないか、という東大で指導したことがあったらしい元最高裁判事の言葉の紹介があって、妙に印象的でした。言われてみれば、「金閣寺」なんか、美醜について主題みたいなものがあってそれを片っ端からああでもないこうでもないとあらゆる方向からぶれることなく結論を導くために刑事裁判よろしく一直線に物語が進んでいる気がします。気のせいかもですが。