共謀罪について

いわゆる共謀罪(謀議罪)は、法律案としては、長期4年以上10年以下の刑を定める犯罪について団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者を2年以下懲役又は禁錮の刑に処すものとしています。(死刑又は無期若しくは長期10年を超える刑を定める犯罪についての共謀には、5年以下懲役又は禁錮との加重規定があります)
また団体というのはマルボウの方とか別に指定するわけでないようです。
なお犯罪の種類の限定がなく、長期4年以上の刑を定める犯罪について、そのすべてにわたって共謀罪を新設しようとしてます。事実上刑法そのものを大改変するに等しいものなんですが。

今迄は判例によって共謀共同正犯理論というのがとられてまして、共謀者の誰かが犯罪の実行に着手したときには、他の共謀者もその罪責をともに負うこととされています。だれかが男の子を捕まえてパンツを脱がして、という着手行為がなければ、イケナイコトをしようという謀議に参加しても強制わいせつの罪責を負わなかったわけです。(ただ共謀共同正犯理論自体については、学説上異論がないとはいえないですけど)
しかし、新設されようとしている共謀罪は、犯罪の実行の着手前の共謀それ自体を処罰の対象としています。共謀と認められるものがあれば、犯罪の実行着手に至らなくても独立して犯罪となるわけです。
つまりパンツに手をつけたとか実行の着手等の客観的事実が全くなくても強制わいせつについての謀議を犯罪とするわけで、そもそも刑法の基本原理である客観主義というのを事実上無効にするようなもので、かつ、犯罪の第一の要素である構成要件が広汎で不明確である点においても、憲法の定める罪刑法定主義に反しているとたしかにおもうのですが。

いままで構成要件解釈の実質化というのがあって、たとえば窃盗罪というのがあって、しかしタバコ一本盗んだところでそうそう窃盗罪として起訴されなかったことを考えると、めくじらをたてる必要はないのかなあ、とおもいつつも、引っ掛かりを感じます。

付言しますと、わいせつ図画頒布の場合は二年以下です。ちょっとやばめのやおい本をおつくりになる相談をしても共謀罪とは関係ありません。