安静時に視聴したもの「ヨーロッパの高速鉄道」

白内障の手術後、数日安静を言い渡されています。特に眼球に衝撃を与えるのもNGで、ギッターと呼ばれるゴーグル状の保護メガネを装着してて、寝るときもそれです。メガネを装着して寝るというのがはじめてだったのですがすんなり眠れています。それほど繊細ではなくて残念ながら(…残念ながら?)あんがい図太いのかもしれません。

安静にしてろと云われて休みをとったものの、絶対安静ではありません。目と下半身がどのように関係するのか正直わかっていないのですが「下半身が力むことをしないように」と云われててその言葉で力仕事や重いものを持つのがNGなのだな、と理解しています。なので洗濯ものは力まないのでやったものの、朝九時にはやることがなくなってNHKBSの欧州の高速鉄道の番組(「ヨーロッパの高速鉄道」2001年制作)を視聴しだし、興味深かったので途中からメモをとりだしていました。力んでこそいないものの安静が必要な人間のふるまいとして妥当か?といわれるとぐうの音も出ません…って前置きはともかく。

高速鉄道の場合、いちばん良いのは直線ですっ飛ばすことです。ところが投資額や地形の都合でそうはいかない場合があります。たとえばカーブでどうやって速度を落とさずに切り抜けるかという問題が出てくるのですが、北イタリアから山岳地帯を経てスイス方面へ向かうチザルビーノの場合車体を強制傾斜させ切り抜ける工夫を、ストックホルムから一部在来線を経由してコペンハーゲンに向かうX2000の場合は車体と台車との間をゴム部品をかませて柔軟性を持たせて切り抜ける工夫を、それぞれしていて、番組内ではそれぞれの台車等や沿線風景を映しながらその特徴を解説していて、唸らされています。高速鉄道ですから起終点の風景や速度だけ扱っても良いのですがそれをせず、なぜそれが可能になったのかや地域事情を踏まえて最適な技術を開発してることを丁寧に示してるのが観ていて好感持てました。

当然フランスのTGVにも番組内で触れています。台車や動力伝達の構造が複雑になりメンテナンスに難があるのは承知の上で車両を製作していることに触れ、代わりに路線はカーブやコストのかかるトンネルを極力排除したほかある程度の上り勾配を許容し速度が落ち、逆に下り坂では加速する前提の設計であることに触れながら、沿線の丘陵地帯の勾配区間を走行するTGVの映像も添えていました。

2時間近く20年前の映像を視聴していたのですが、飽きずにいて、そして古びた印象がまったくありませんでした。その地域がどんな状況で、その状況下で開発された技術の紹介に多くを割いて、それがいまも基本的なところでは変っていないからだと思われます。残念ながら2022年現在X2000は運行を停止してしまっていますが、チルビザーノの車体傾斜のシステムは今でもカーブ区間でスピードを出す技術として生きていますし、TGVも健在です。それどころかKTXを筆頭に兄弟も増えています。

わかりやすい最高速度を競う番組にせず、その地域に最適な技術をもった高速鉄道についてのドキュメントにしたからこそ古びなかったともいえるかもしれません。なんだろ、良質な番組を視た感がありました。いまのNHKには過去に負けぬよう、良い番組を作って欲しかったり。