「青春ブタ野郎はシスコンアイドルの夢を見ない」を読んで

上記の本は春先までMXでやっていた「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」というアニメの原作の一部です。 映像化したものを視聴して原作を読むという経験は飛ぶが如く以来かも。

よくできた姉にあこがれつつも姉のようになれず比較され自らに劣等感を抱いて葛藤するアイドル(豊浜のどか)と、そのアイドルの妹を持つよくできた姉(桜島麻衣)が入れ替わるのがメインのお話です。いわゆるライトノベルズの範疇に入る話なのですが(ってライトノベルズがどういうものかを詳しくは知らぬものの)、なぜ登場人物が入れ替わったかについて一応は量子力学の話に則って謎解きとして最後にちらっと書かれてるところがわりと良心的です。ついでに書くと肝心かなめのストーリー展開は会話によって進められます。会話以外の説明文や描写は比較的控えめで、会話も饒舌ではありません。ありませんがその饒舌ではない会話が要所要所で鋭利な刃物のように登場人物をえぐります。えぐりますが悪意も裏表もなく不思議と後をひきません。というか余計なことを書くとなぜそうなってるのかの因果関係がはっきり描かれてるせいか「間違いを指摘しつつその間違いはやむを得ない」というような間違いをどこか肯定する空気が全編に流れてる気がしました。うう、書けば書くほどボールペンでビー玉をつつくように余計なことをしてる感があって、本の感想を書くのが苦手であることを自覚しちまうのですがって、てめえのことはともかく。

私は姉がいませんしよくできた姉なんて想像上の未知の世界の生き物でしかありません。よくできた姉を持つ劣等感のある妹の気持ちというのもやはり未知の世界なので(アニメ放送を視聴していたので)ストーリーは知ってても改めて興味深く読んでいました。ネタバレしないように書くのが難しいのですが、(なんでもソツなくこなしてしまう人と言い換えても良いかもしれないのですが)よくできた姉というのは目標を前にするとなんとか克服してしまうことしか考えていない不器用な性格の裏返しの結果であるという描写は妙に説得力があり、また、他人との比較という行為や他人と比較され続けた結果としての他人に褒められたいという欲求がおきてそれらが人を歪ませるという描写も妙に納得してしまったところがあります。描かれた現象はまず起きませんが、登場人物の姉妹に限らず、こういう人っているよなあ、わりとどこでも起こりうるのでは、と思って読んでいました。でもって登場人物が自力で答えを出したところで、事態は解決します。この、自力で答えを出す・なんとかするところがとても好ましく思えました。

以下、些細なくだらないことを書きます。

この本の主人公はよくできた姉とそれほどでもない妹の二人ですが、よくできた姉の恋人である梓川咲太も出てきます。その梓川咲太がシリーズを通しての主人公で、この本でも狂言回し的かつ重要な役回りを担います。で、恋人同士の二人の会話の中で「潜水艦ごっこが出来ない身体にするから」というのがありました。「男ならだれでもやってますって」とも書いてあるので、ああ女性にはない部位をつかうのだな…という推測がついたのですが、どういうものかはちゃんとは知らずにいました。念のため土曜の夜にメシを食いに来た相手に訊いて少し笑われて教えてもらってひとつ賢くなってます(これを読んでるよいこのみんなは誰かに聞いて賢くならなくてもたぶんいいです)。そういう遊びを思いつかなかった幼き日のおのれの頭の固さがちょっと悔しかったり。