ブラタモリ甲府盆地

録画していたブラタモリ甲府盆地の回を視聴しました。面白かったです、で済ませるのは惜しいのでもうちょっと書きます。

番組では終盤に勝沼が取り上げられていました。勝沼は傾斜地もあり米作に適さないところもありなおかつブドウがずっと栽培されていたのは番組内でも説明がありましたがそれは間違いありません(果物のことを水菓子といって江戸へ出荷しています)。しかし戦前は養蚕もさかんでブドウの木のほかに桑が植わってて、田中銀行という繭を担保に資金を貸す銀行も勝沼には存在していたくらいです。ただ養蚕が傾きはじめたあとに桑の代わりに植えたのが勝沼ではやはり

ブドウで、結果として現在のように勝沼はブドウ畑だらけになり駅名までいまは

勝沼ぶどう郷」です。ついでに書くと笛吹川流域などでは養蚕の衰退とともにブドウのほかに桃が植えられ、甲府盆地東部はブドウと桃の産地として有名となります。番組の内容は決して間違ってはいないのですがフルーツ王国になったことや個人的にはいまの甲府盆地の光景は昔からではなく養蚕の衰退とセットであることにも触れてほしかった気が(蚕種商人の末裔なので)。

もうひとつ、酒石酸も番組内で触れていました。酒石酸はワインに石灰を添加して採取されそれが音波探知機に使われていた、という説明でした。たしかに酒石酸ワイン醸造時に発生します。ワインの瓶の中にあるのは酒石といい、酒石酸がミネラルと結合して酒石になります。酒石酸は酸味に関係してありすぎるのも困るので、ワイナリーによって考え方が違うのですが、いまはステンレスのタンクにブドウを突っ込んでワインを発酵させたあと、そのあと冷却すると酒石酸とミネラルが結合した酒石が沈殿してゆくので上澄みをボトリングしたりする製法もあります。(番組内で写ってましたがボトリングした)瓶内に酒石がある瓶は不良品ではないし、酒石がない瓶が不良品、というわけでもありません。なんだろ、ほんとはそこまで説明して欲しかった気がするのですが、ゼイタクかもしれません。

細かすぎる注文は横に置いておくとして、竜王の信玄堤でやる浅間神社の祭礼の女装した男性が神輿を担ぐ「おみゆきさん」というのを、番組を視聴するまで私は知りませんでした。ただ富士山の木花咲夜姫が気難しいというか怒りっぽくて、自分より容姿が美しかった八ヶ岳を嫉妬によってぼっこぼこにした(ぼっこぼこにされた八ヶ岳は富士山より美しいとはされなくなった)、という伝承を知ってるので、女装した男性があんまり美しく装うことをしてなかったのはすごく理解できました。怒らせてぼっこぼこにされたら困るわけで。

また甲府盆地フィリピン海プレートに引きずられて1年で1mmずつ沈下してるというのも知りませんでした。10年で1cm、100年で10cmとすると信玄公の時代からすると40cm以上沈んでると思うと理屈は理解してるつもりなのですがやはり理解が表面的なのかなんだかとても不思議な気がしました。

知ってる土地のブラタモリの回はいつもそうなのですが45分があっという間でした。47都道府県制覇して行き尽くした感はあるのですがまだ取り上げる価値のある場所があることを思い知らされました。今後もマニアックで濃い放送を期待したいです。