豆腐になにを載せるかの問題もしくは豆腐になにかを載せるときの問題

暑さにもいろいろな表現があって、大人になって知ったのが京都のじりじりと暑い油照りという言葉です。その油照りの京都はご存じの通り千年以上人が居て、いったいあの人たちは油照りの夏になにを食べてるのか?というのが謎に思ったことがあって、以前に京都で本屋に入って「京のおばんざい100選」(松永佳子・平凡社・2010)という本を買いました。詳細は本書にあたっていただきたいのですが梅雨明け十日のいちばんキツイ7月の10品の料理うち、鱧の棒寿司、鱧の照り焼き、ぼたん鱧煮椀、鱧のおとし、鱧きゅうなど5品が鱧で動物性たんぱくを鱧で摂っていたのだな…と、おぼろげながら推測がついたのですが、私が住んでいる多摩ではいま鱧は簡単に手に入りませんからまずマネができません。余談ですが夏の暑さのせいかその本では高野豆腐の含め煮ほか冷めても美味しいものが夏のラインナップになっています。

本題の豆腐の話をすると6月の料理としてわさびを添えた胡麻豆腐の上にゆで小豆が載っていました(P51)。豆腐もしくは胡麻豆腐に載せてはいけないものが法律で決まってるわけではありませんが、わさびはともかく、なぜ小豆?それ美味しいの?感が拭えません。いっぺん6月に胡麻豆腐にほんとに小豆が載ってるのか京都へ確かめに行きたいと思ってるのですが、残念ながら忙しい時期なので果たせていません。もちろんマネしようとも載せてみようとも思えずにいます。

さて、フィクションをそのまま信じるのは危険なのですが池波正太郎剣客商売の『勝負』の「小判二十両」という作品では登場人物である小兵衛は夏に日に四丁の豆腐を食べたことになっています(P313)。そのうち一丁は井戸水で冷やしたうえですり生姜をのせ、それに酒と醤油をあわせたものにごま油を2滴もしくは3滴たらしたものをかけまわして食べていて、読んだあとに何度もマネしていて、生姜はチューブのですが今夏もマネています。

さすがに一日に四丁とまではいきませんでしたが、今夏は猛暑が続いたせいで豆腐もけっこうな頻度で食べています。ネギや醤油、おかかとかが続くとつまらないので、小兵衛さん式の生姜載せはもちろん、食べるラー油やわさび漬け、とろろ昆布+めんつゆ等もやっています。もうそろそろ涼しくなってほしいところですが、おすすめのものがありましたら是非とも念力でご連絡いただけると幸いです。

以下、くだらないことを。

今週に入ってわさび豆腐と銘打ったものを買っています。私はてっきり胡麻豆腐みたいに豆腐そのものにわさびの風味が練り込んであるようなものと想像してそれを買ったのですが、いざ封を開けてみたら豆腐は白くおぼろ豆腐で、別添のわさびとタレがついていました。えーなんだよこれ、といってもあとの祭りです。豆腐にわさびを載せることは何度かしてきましたがそのときだけは「してやられた感」が強く不思議と敗北感があり、いつもと異なりその日ばかりは満足感もなかったです。些細なことなんすけど、豆腐になにかを載せるときの心理状況って舌を左右するのかなあ、と。これ以上書くといくらか豆腐メンタルであることを自白してるのと同じのような気がするのでこのへんで。