「弁当忘れても傘忘れるな」雑感

金沢には「弁当忘れても傘忘れるな」ということわざがあって一日の中で晴れたり雨が降ったりと天気が変わりやすいことの忠告なのですが私がそれを知ったのは着いてからのことで、そのことわざを知らない浅学菲才な私は金沢駅で呆然としていました。そのときはコンコースの片隅で忘れ物市をやっていて、それを目ざとく見つけ有難くそこで傘を買い、難を逃れています。もっとも忘れ物という他人の失敗を有難く思うというのは「人としてどうよ」とさすがにうっすら思ったのですが、鳥頭なせいもあってすぐ忘れています。

去秋のある雨の日にバスで通院先へ行く途中で親子連れが乗ってきました。子供のほうは未就学と思われ、そして二人掛けの席の隣が見知らぬ女子高生で、隣の女子高生がその親子連れに「座りますか」と声をかけたので私も退かないわけにはいかないな…と思って席を譲り、しばらく吊革につかまって立っていて、目的の停留所になったのでそのまま降りています。ここで終われば美談なのですが、傘を席の横に置きっぱなしであることに降りて扉が閉まってから気が付き、傘が無い、と井上陽水さんの歌詞と同じ言葉を口にしても時すでに遅し。去ってゆくバスを追うわけにもいかず、病院の表玄関へ霧雨の中を打ちひしがれながら小走りで向かっています。誰が悪いわけでもなく私の不注意で、それほど高いものではないもののも忘れ物市で売られる傘をひとつ作っちまっててて、他人の失敗を有難いと思った金沢の借りを返したと思えばよいとあとで納得させたものの、直後は雨が心に染みるなんてこともなく、傘を忘れた敗北感だけがしばらくありました。

話はいつものようにくだらない方向へ素っ飛びつつ、ここではてな今週のお題「レイングッズ」をひっぱります。刀を差すように傘を常に持ち歩けば忘れることはないと思いますが、どう考えても前時代的で実用的ではありません。良い方法があればいいのですが妙案は思いつかなかったり。

話を冒頭のことわざに戻すと、新幹線に乗る前に買った崎陽軒の弁当をどこかで忘れてしまうとおそらくダメージデカいと思うので「弁当忘れても傘忘れるな」というのは簡単には肯定できません。が、雨の日の傘も弁当と同じくらい忘れるとダメージがデカいと思うのです。そんなことないですかね。ないかもですが。