映画版『ゆるキャン△』を観て(現実には到達できそうにない理想郷を目にして)

東京ローカルのMXは夜になぜかアニメを流します。コロナ禍になってから報道番組を視聴するのがしんどいときにたまにMXにチャンネルを合わせていました。そのときに知ったのが『ゆるキャン△』で、「絶叫は心の中で」という富士急行のCMが流れてたので視聴できたのは富士急行のおかげです。もっとも物語にはハイランドは出てきません。各務原なでしこ、志摩リン、大垣千明、犬山あおい、斎藤恵那の女子高生5人がキャンプを楽しむ話で、本栖湖や四尾連湖を筆頭に山梨県下の風景が見事に描かれていて、かつ、起承転結がしっかりしていて、土地勘もあるせいかほぼ全話視聴していました。その『ゆるキャン△』の映画が公開されてるのを知って観てきています…って、書いてるおっさんの事情はどうでもよくて。

幾ばくかのネタバレをご容赦ください。アニメ版『ゆるキャン△』では高校生だった5人が映画版『ゆるキャン△』では大人になってそれぞれ職を持って働いてるところからはじまります。資金的余裕が出来たけど時間的余裕がなくなるという誰もが通るジレンマに悩むのはお約束として、仕事で大垣さんが抱えていた案件のひとつである富士川町の放置された土地をキャンプ場として決して余裕があるわけではない状況下で再生してゆくのがメインなのですが、もちろん一筋縄では行きません。どんな波乱があるかは是非映画をご覧いただくとして。

もう少しだけネタバレをご容赦いただきたいのですが、山梨に職を見つけたのは大垣さんと犬山さんだけで、また犬山さんが教師として赴任した学校の閉鎖を含め、間接的ながらも山梨の緩やかな衰退がきちんと描かれています。その緩やかな衰退の中、キャンプ場としての再生をどのようにしたかは映画館でご覧いただくとして。起承転結はアニメ版と同じくかなりしっかりしてて最後まで飽きずに視聴しています。

起承転結は、と書いたのにはわけがあって物語としては飽きませんでしたが、5人の奮闘は理解できなくもないものの現実的に「そうはならんやろ」と疑問符が付くものが細部でないわけではありませんでした。架空の物語ゆえにその疑問符はすっごく不粋で些細なことです。架空の物語とはいえ現実に起きている山梨県の緩やかな衰退がちらっちらっと散りばめられそれに有効な打つ手がない現況からすると、到達できない理想郷の成功例だけ見せられたような気がしてならず、若干の引っかかりが正直あります。

でも、そんなことを考えるのは少数派かもしれません。「ああ今冬絶対石狩鍋作ったろ」と思う程度に映画の中で作られる料理はアニメ版同様に美味しそうで、そして下部町身延町を含め描かれてる景色も見事で良い仕事がしてあって、不粋かつ些細なことに足を引っ張られなければ繰り返しますが起承転結はしっかりしてるので多くの人が確実に濃密な時間を過ごせる映画とは断言できます。

さて、くだらないけど大事な告白を。映画館で配布された冊子で

志摩リン役の声優さんが青ブタの古賀さんと同じ人だと気が付きました。それくらいアニメに疎く、アニメを知りません。アニメの感想の書き方もわかりません。なので上記の感想はあまり役に立たないかも、なんすが。