「その着せ替え人形は恋をする4話」を視聴して(もしくは言語による意思疎通の難しさについて)

小学校の国語の教科書に「附子」という狂言がありました。毒だから近づくなと云われつつ覗き込み、気になって舐めてしまい、なぜなめたかということの理由を無理矢理考え出さねばならなくなり、茶碗と掛け軸を割って「(大事なものを壊したので)死んで詫びようと思った!でも死ねなかった」ということにしようと目論み、そこに主が帰宅してさあどうなる…というのが話の筋でした。たぶんきっと前にも書いたと思うのですが、それから恥ずかしながらそれ以降、「え、どうなるの?」という話をみると引きこまれることがないわけではありません。

話はいつものように横に素っ飛びます。

「その着せ替え人形は恋をする」というMXで今冬放映中のアニメを録画して視聴しています。簡単に書くと裁縫が不得意でもコスプレをしたい女子高生の喜多川さんに人形職人を目指しつつ裁縫ができる五条くんがいまのところ振り回される物語なのですが、3話ではコスプレに必要な材料が揃い、そしてコスプレのイベントが2週後にあると喜多川さんから五条くんが知らされるところで終わってしまいました(詳細は是非アニメか原作をお読みください)。シロウトながら2週はムリだろうと思いつつ「附子」同様にフィクションなのに、え?どうなるの?という観点からハラハラしながら録画した4話を視聴しました。

不粋なネタバレをご容赦いただきたいのですが、アバウトに書くと五条くんは奮起して喜多川さんと約束した衣装を完成させます(その奮起の詳細は是非アニメか原作をお読みください)。しかし衣装を見た喜多川さんは泣き出してしまい(なぜ泣いたのかの詳細は是非アニメか原作をお読みください)、2週で出来るとは予想していなかったことを告白します。じゃあ2週間後にイベントがあると喜多川さんがいったのはなんだったのか?ということになってきます。

実は第3話でコスプレイベントについて喜多川さんが五条くんに語るシーンがありました。そこで五条くんはコスプレイベントについて尋ねます。喜多川さんがそれに答えるかたちで2週間後に(参加するとは一言も言わずに)イベントがあると述べます。単に事実を述べたまでで喜多川さんに非はありません。しかしそれを聞いた(テレビのこちらのおっさんと)五条くんは、(参加すると思って)それまでに間に合わせなくちゃいけないのか、と考えてしまったわけで。言語による意思疎通は不完全でそこに想像の余地があり、かつ、人には勝手に想像して補完する機能が備わってて、しかしそれが外れてしまうことってあって、3話から4話の流れはまさにそれです。コスプレしたい女子高生や裁縫が得意な男子はそうそういませんが、だれもがやりかねないことをフィクションに載せてエンタテイメントとして再現したわけで、首筋にスッと刃物を突き付けられた気がちょっとだけしました。

言語による意思疎通は不完全でそこに想像の余地がありそして人には勝手に想像して補完する機能があり、「宇崎ちゃんは遊びたい」もそこらへんをうっすらと扱っていたのでもしかしたらアニメあるあるなのかもしれぬもののこの方面に詳しくないので新鮮で、その上で言語化すると、言語の意思疎通って難しいな、という毒にも薬にもならぬ月並みな感想になってしまうのですが。

さて「その着せ替え人形は恋をする」は喜多川さんが詳しいエロゲーやコスプレの話が付随してちらっちらっと出てきます。以前の放送でも「ハーレムもの」という未知の世界を知ったのですが、今回も「病みメイク」という未知の世界を知りました。次回予告には「乳袋」という語句がでてくるのですが、知らなくてもよい世界が回を重ねるごとに増えてく気がします。もちろん五条くんの詳しい分野である昨今の雛人形についても作品内で触れられています。金髪ヒョウ柄雛人形があるとかはじめて知りました。買いはしないけど画像を止めてまじまじと観察してしまっています。

ハラハラしながら一週間を過ごし、かつ、4話も(着替えシーンは要らないかな…とはおもうものの)飽きずに俗世を忘れて最後までつい視聴してしまってます。「その着せ替え人形は恋をする」は物語の進め方が巧く、5話も録画して万障繰り合わせて視聴するつもりです。