「その着せ替え人形は恋をする」11話を視聴して(耳に入ってくるものもしくは「聴く」という行為について)

コスプレをしたい喜多川さんと裁縫が得意な五条くんを中心に物語が進行する「着せ恋」の11話を録画して視聴してます。いちいちここで報告する必要があるかどうかわからないのですが、語らずにやり過ごすのはもったいないので書きます。

いつものように話が横に素っ飛びます。

視覚はまぶたの筋肉を使いますが、耳からの聴覚というのはさして運動機能を必要としません。だから意図せず聞こえてしまうことがあります。3話では布を買い出しに行ったあとに五条くんが「朝礼のとき、全校生徒の前で射精が止まらなくて」と喜多川さんに洩らすのですが「わたしも焦ったw勢いヤバいよね」と笑う喜多川さん以外、それを聞いてしまったほうは驚愕の眼差しで五条くんをながめてしまいます(3話でなにが起きたかは是非アニメか原作をご覧ください)。同時に耳からの聴覚によって視覚が効かなくてもなにが起きてるかを人は察することができないわけではありません。厄介なことを書くと聴覚はそれだけだと想像力も掻き立てます。1話では誰も居ない被服科準備室で服を脱ぎだした喜多川さんから「向こう、向いてもらってていい?」といわれた五条くんは目をそらしつつも、ファスナーを下げる音のほか、服が掠れそののち落ちる音が耳に入ってしまい、動揺してしまいます(1話でなにが起きたかは是非アニメか原作をごらんください)。

話をもとに戻します。

以下、不粋ないくばくかのネタバレをお許しください。「俺は、いまラブホテルに居ます」という題がついている通りに11話後半では喜多川さんと五条くんはラブホテルに居ます。そこへ誘導したのは喜多川さんです。詳細はアニメか原作をご覧いただきたいのですが、なぜ喜多川さんが五条くんをそこに誘導したのかはすべて理屈があります。合理的で非の打ちどころがありません。五条くんは最初は狼狽しますが喜多川さんの意図を理解し、新しく制作したコスプレ衣裳の試着と撮影を開始し、そのうち五条くんは撮影の途中で目線が欲しいと仰向けになった自らの身体の上に馬乗りになるように喜多川さんを誘導します。喜多川さんは体重が気になるので最初は戸惑いますが意図を理解し慎重に腰をおろし、結果として良い構図の写真が撮れています。そこまでの五条くんの行動にも理屈があってなんら非の打ちどころがはありません。たとえそれらが傍から見ると形式的にはなにかに似ていたとしても。

何回目か何十回目かのシャッター音が室内に響いたあと、当該建物の都合で当然のように喜多川さんと喜多川さんを載せた仰向けの五条くんの耳に入ってしまうものがあり、(よい子のみんなはわかんなくていいことなのですが)隣室でなにが行われてるのか察して冷静になった五条くんは喜多川さんに退くよう促すものの、結果として部屋は薄暗くなってしまいます(なにが起きたのかはアニメか原作をご覧ください)。

さらにもういくばくかのネタバレをお許しください。五条くんの身体から退かなかった喜多川さんと無理には退かせなかった五条くんは薄暗い部屋で、意図的に言葉は発さず、互いに耳を澄ませかすかな呼吸音だけを聴き、ゆっくりと距離を縮めます。2人がどうしたかはやはりアニメか原作をご覧いただくとして、時間終了を告げる呼び出し電話が鳴るまでのその薄暗い部屋での濃密な時間の経過を聴覚を含めて丹念にシリアスに描写していて、とても印象的でした。かすかな呼吸音を聴くということは意図的にやらないと成立しませんから2人が同じ「聴く」ことをしてる行為の描写が、考えてることが明示されなくても同じであることを理解できる表現ゆえ、秀逸でちょっと唸らされています。

アニメに詳しくないので下手なことは云えませんが「着せ恋」はわりと聴覚にも焦点を当てている気がするのですが、特に11話は聴覚の使い方が巧かった気が。

さて、些細なことをひとつだけ。

11話では五条くんと喜多川さんは1斤丸ごとのハニートーストを注文し食べるシーンがあります。「着せ恋」は青ブタと同じ会社が作ってて青ブタでもいままでの「着せ恋」でも料理の描写はほんとに手を抜いてないのですが、今回のハニートーストも(見たこちらが作り方を検索するくらいに)手を抜かず描かれています。ついでに書いておくと(よい子のみんなはなにに使うかを含めてわかんなくていい)包装された電マもちゃんと描かれていました。些細なことなのですがラブホの背景や備品を含め、その些細な細部へのこだわりが相変わらずハンパなく、描いてるスタッフの方々の狂気に近い熱意に敬意を表したいです。

とうとう来週が最終回になってしまいました。録画予約は完了済みで、忙しい時期が続いてるのですけど必ずいつか視聴したいです。