はたらく細胞6巻

知識が無かったことを書くのは勇気が要ります。でも無かったことを有るように書くのもおかしいのでちゃんと書くと、私は20年以上前は基礎的なことを含め医学に関する基本的な知識がそれほどありませんでした。死んだ父は血小板が減少して死に至ったのですが、赤血球と白血球があることは知っていても、血小板がどういう働きをするかを父が入院するまで正直ちゃんとは把握していませんでしたし、血小板が足らないことがどういうことか理解出来ていたかというとかなり怪しいです。血小板は血管壁が損傷した場合にその傷口を塞ぐ趣旨の説明をあらためて受け、父の病室に戻ると父の身体の内出血のあとの意味を理解して、事態の深刻さを悟っています。

一昨年の夏に血液の数値がおかしくなりはじめて、そのあたりから「はたらく細胞」(清水茜講談社シリウスコミックス)の存在を教えてもらって読みはじめています。「はたらく細胞」では血小板は幼児のような姿の「血小板ちゃん」として補修のプロとして切り傷や最新刊ではたんこぶなどの対応を含めて活躍しています。読みながら「ああ20年前にこれを読みたかった!」と本気で思いました。読みはじめた頃は赤血球の値がおかしかったのですが「はたらく細胞」の赤血球さんはどちらかというとおっちょこちょいに描かれてるのを読んで調子がおかしいときには「赤血球さんがなにかしでかしたのだな」とおもうことで納得してやり過ごしていましたし、白血球が減っているときは「雑菌をぶっ殺す」というキメ台詞がある白血球さんが少なくなってるのだから感染症に気を付けなくちゃな、と考えるようになっています。なんだかこう書くと40半ばを過ぎたのおっさんの書く文章ではありませんが、「はたらく細胞」のおかげでおぼろげな知識が前より鮮明になりおのれを納得させたり何に注意すればいいのかうっすら気がつくようになってて、実感としてはいくらか賢くなっている気がしています。

前置きが長すぎた。

はたらく細胞」の最新刊である6巻が発売されてて読みました。iPS細胞や新型コロナなど注目度の高いものについても取り扱っています。iPS細胞に関しての話も興味深かったのですが詳細はお読みいただくとして、やはり新型コロナを扱った部分が個人的に読めてよかったです。

恥をさらすと以前から新型コロナに関連してサイトカインストームという言葉をちょくちょく耳にしつつもどういう状況かを理解してるとは云えなかったのですが、本作では免疫反応が過剰に起こることでウイルスに冒されてない細胞まで攻撃してしまう≒免疫系細胞たるキラーT細胞がどってことない細胞まで殴る、というように置き換えていて、はっきりしなかった知識がいくらか鮮明になっています。そのサイトカインストームが仮に全身で起こり得ててもちろん肺とて無傷でいられるわけがなく、肺の機能が低下すれば酸素が行きわたらず多臓器不全を起こしがちになるのですが、本作ではそれらがストーリー仕立てで展開していて何が起きるのか・何が怖いか、などがそれなりに理解できましたし、赤血球さんの運ぶ酸素がキーになってくるのですが、読んでてああそういうことなのか、と腑に落ちています。わたしのように知識の欠損がある人間にはちょっと読む価値はありました。

シリーズはこれで完結、のようです。もう出会えないことは新型コロナ以上の得体のしれない病気と闘わずに済むことなのでそれはそのほうが良いのですが、一抹の寂しさがないわけではなかったり。