(江州弁のない)映画「君の膵臓をたべたい」を観て

有効期限切れが近い無料鑑賞券が手許にあって映画館へ行き、あいにくその映画館はいまは旧作中心で、ホラーは却下されたので消去法で「君の膵臓をたべたい」を先週末、観ました。ダイアリに書き留めるほどではないとは思いつつ、日が経過するにつれて書いておきたい意識が出てきたので、書きます。

いくらかのネタバレをお許しください。「地味なクラスメイト」である主人公はヒロインの山内さんのけっこう重い秘密を知ります。他人の秘密というのはけっこう重たいものであればあるほどゲロった方が楽なのですが、他人に興味があるわけではなかった主人公は表面上は動揺せずその秘密を口外しません。主人公が図書委員と知ると山内さんも図書委員に立候補するなど主人公に意図的に接近してゆきます。ただし山内さんはきちんと仕事をするわけではなく、むしろ余計な仕事を増やします。戸惑いつつも主人公も山内さんに対して無視はせず、誘われればケーキを食べに行くし、知った秘密が重いゆえに引き摺られるように家族にうそをついての福岡県までの旅に付き添います。そのいきさつや唐突にやってくる山内さんの死の原因を含めなんだか七割はマンガっぽいというか、冗長な青春ドラマを眺めてるようでした。その原因の一つは近江鉄道八日市駅大津パルコが出てきてるにもかかわらず出てくる登場人物がだれ一人として江州弁をしゃべらず完全に標準語だったせいかもしれません。そのことが作り事めいてみえて・すべてがマンガっぽくみえてあまりリアリティを感じられなかったというか。

でもなんですが。

ヒロインの死後、主人公は教師として母校に赴任し図書館移転の仕事を任されます。その最中に山内さんの図書館での余計な仕事を発見し、山内さんの意思の通りに動きます。その行動とその行動の結果で「君の膵臓をたべたい」という作中に出てきた言葉の意味のひとつを改めて悟って、最後まで視聴して良かった、かな、と思いました。

さらに付け加えると、「真実か挑戦か」というゲームがたびたび登場します。ある場面でそれに勝った主人公はゲームにもかかわらず「生きるってどういうこと?」という問いかけを山内さんに対して主人公はします。重い問いかけではなく、主人公の素朴な疑問かもしれません。ただ山内さんの答えが目が覚めるような・とても腑に落ちる・普遍性のある返答で、唸らされています。

そんなふうに「君の膵臓をたべたい」は刺さった部分があったので、そして原作があるのを知ったので(このパターン青ブタと一緒ですが)映像になっていない文章で物語を知りたい意識がここ数日でてきて、ちょっと探してみようという気になりました。アニメもあるようなのでそれもそのうちなんらかの方法で視聴するつもりです。

最後にくだらないことを一つだけ。先ほどあまりリアリティがない…と書きましたが、そうではない部分もありました。山内さんには同性の親友がいて山内さんは彼女を大切にして彼女も(本作をご覧になればわかるのですが相応の理由があって)山内さんを大事にしてるのですが、それゆえに主人公に対してすごく攻撃的で、女の子の友情っておっかねー、と思わせる部分はすごくリアリティがありました。フィクションと知りつつハラハラしてたのですけど、なんだろ、主役ではない友達の女の子役の俳優さんがこの先、良い役もらえるといいなとも思いました。