杉本家住宅へ

週末に京都へ行っていました。

祇園祭の後まつりのあとの虫干しか片付けの最中なのか、場所からするとおそらく鶏鉾の、傘がひっくりかえってるところに遭遇しました。ちょっとぎょっとしたことを告白します。虫干しにちょうどいい天気というか、正直暑かったです(甲府と同じで盆地で山に遮られ風が無いのでキツい)。暑かったので彼氏と彼氏の京都在住の知り合いと飲んだビールが格別だった、で終わらせても良いのですがもうちょっと続けます。

綾小路通祇園祭のときには伯牙山の町会所にもなっている杉本家住宅という建物があります。当代の当主は料理関係の本を出していてそこから杉本家・杉本家住宅の存在を知りました。何年か前から興味があって訪問したいと思っていて、今夏は事前予約なしで内部見学可能なので寄ってきました。

いまあるのは蛤御門の変のあとの明治3年に建てられたもので、奥行きは52メートル、間口は30メートルあります。広い間口を誇りながら高さをわざと変えて目立たぬよう・一軒のようには見せない工夫がされていて、規模のおおきな商家でありながら、そうは感じさせない不思議な建物です。瓦も角が無く威圧感がありませんしどこか端正な印象です。

杉本家は他国店持京商人といい京呉服を京都で仕入れて奈良屋の看板で佐倉などで販売していました。それが最近まであった千葉駅そばの三越につながるのですが、いま杉本家は現在は商売から手をひいています。さきほど当代は料理関係と書きましたが先代はフランス文学者です。

仏間のわきに有る仏間庭です。判りにくくて恐縮ですが、水盤の下には(おそらく縁起物の)蟹の飾りが置いてありました。石は「なめりいし(滑石)」と呼ばれるもので西本願寺にも類似のものがあります。何年か前に杉本家を特集したNHKBSの番組内では大掃除のときに敷かれてる石をすべて手洗いして磨いている映像が流れ、そのときはただただ「古い家に住むって大変なんだなあ…」と思うにすぎなかったのですが・現地へ行ってうっすら理解できたのですが、仏壇の手入れをするように仏間庭も手入れしているのかもしれず、もしかしたらこの仏間庭はおそらく仏壇や仏間とセットという考え方なのかもしれません。

庭ついでに書いておくとこの仏間庭はもちろん、おくどさん(≒台所)のある走り庭を含め名勝指定になっています。

名勝指定に含まれる露地庭です。井戸のそばには茶室があります。うさぎの置物は(おそらく子孫繁栄の)縁起もの。杉本家は敬虔な浄土真宗門徒で、おくどさん(≒台所)にも火伏せの愛宕のお札がないのですが、こういう縁起物はオッケイなのがなんだかほほえましかったり。

ところで露地庭は見た目は涼やかなのですが、苔があるせいか屋敷内のあちこちで電気蚊取りが稼働していて蚊はけっこういるようで、昔はいまより蚊対策が大変だったのではないかなあ、と。また建具は葭の障子になってたりしていたものの室内の暑さはいかんともしがたく、扇風機もない時代に果たしてどうやってやり過ごしていたのか、ちょっと想像ができません。

写真は綾小路通に面した部屋のひとつの外観です。撮影可能エリアのみ撮影してるので中からの写真はありません。おそらく金沢の茶屋街の格子と同じで縦の格子が台形で外の道路側の面のほうが内側の面より太くなっているようで、中からは光が差し込むと同時に外はばっちりみえてて≒つまり誰が来たかわかるようになっています(覗き込んでいる人が居たので笑ってしまった)。でも外から中はほぼ見えません。些細なことなのですが昔の家屋の工夫を目にすると単純に「すげーなー」と思えちまったんすが。

見どころがいくつもある魅力的な空間で、もうちょっと居たいのを封印して京都駅に向かってます。冷房の効いてる地下鉄の車内は快適な空間でした。でもなんだろ、必ずしも快適な空間では無いけど、チャンスがあればもう一度盛夏でも行ってみたい場所ではあったり。