土日に長野へ行っていました。
【地獄谷】
長野電鉄で桃やリンゴ畑のなかを湯田中へ。
湯田中の先には志賀高原があります。そのせいか、湯田中駅には海外からの旅行客がけっこういて、英語をしゃべてる人が一人だけ駐在してて質問攻めにあっていました。そんななか「デビ」とわたしのことをニックネームで同行者が呼ぶと、外見は日本人でも英語を喋れると思い込んだのか質問がこちらにも飛び火。旅ってどこでほんとなにが起こるか予想つかないです。
湯田中からバスで15分ほどの砂止というところで下車して、山道を25分ほど行くと、
地獄谷の野猿公苑があります。リンゴ等を与えてはいるものの、ほぼ野生に近い状況で観察できるところです。
露天風呂の設備があって、入りそうになると「お!」と周囲の空気が張り詰めるが可笑しかったんすが、真夏ですからさすがに入浴姿は拝めませんでした。
子が親の毛づくろいをしてるのかなー、親孝行だなー、なんて最初は観察していたのですが、あちこちで毛づくろいしてるのと、毛づくろいのあとわりとその手を口に運んでいるのを目撃すると、うむ、毛づくろいじゃなさそうだなあ、とほのかな疑問が発生。管理している公苑の方に質問すると、猿にだけ寄生するシラミとその卵を食している、との回答で、ちょっと腑に落ちました。
質問ついでに山梨では猿による農作物への被害が出てるのでそこらへんも訊いてみたのですが、ここに居る彼らの行動範囲は温泉旅館が一軒あるのみの耕作地がない山の中であるのと、ある程度の餌を与えているのでここに居る猿たちが耕作地のあるようなところまで行動範囲を広げるとは考えにくい、とのことでした。猿の天敵はオオカミなのですがオオカミは事実上絶滅状態にあるとされてるので、敵はおそらくほとんどいません。
公苑内はリンゴや大豆、大麦等一定のものしか猿に与えず(公苑の訪問客が食べ物を与えることを禁じている)、人間がさらに美味しいものを持っている・与えてくれるという発想はないので猿が人間に興味を持たないし、人間なんてどうでもいい存在なので、攻撃もほとんどしません(ただし猿にスマホを寄せ過ぎて猿に攻撃され盗られ、難しい顔して猿がスマホを眺めている事例の写真が管理棟にあった)。
ほんと猿しかいないのですが観察してるだけでもけっこう時間泥棒です。とても興味深い施設でした。
火山地帯なので近くに噴泉もあり、猿が入ってるのは温泉です。地獄谷という名前ですが極楽のような場所で、ほぼ毎日温泉ライフなのが羨ましいかといえばちょっと羨ましかったり(猿を羨んでどうする)。
【諏訪大社本宮】
翌日は上諏訪へ。
中心部からちょっと離れたところに諏訪大社の上社の本宮があります。諏訪大社は諏訪湖の南岸に上社の本宮と前宮、北岸に下社の春宮と秋宮という四つの社があります。
参拝したのは上社の本宮です。写真の左側に柱が建っていますが、御柱といいます。モミの木を数えの7年に一度、建てるのが平安時代からの習慣です。山から切り出して4つの社まで曳いてきて建てる御柱祭、というのがありまして、今年あったばかりです。なんのため、っていうと、神様のよりしろであるとか諸説ありますが、ほんとのところはわかりません。
でもなんのためなんすかね。モミは建材に不向きで、利用法でとっさに思いつくのはお寺の塔婆なんすが、関係ないかも。
茅野市内で見かけた、御柱に使うモミ材と思しきもの。諏訪大社以外でも諏訪や茅野のあちこちで御柱の祭事は行われてて、御柱の祭事は10月くらいまで続きます。
次いで見学したのが茅野市神長官守矢資料館です。建物自体は茅野出身の藤森照信さんという建築家の作品で、鉄筋コンクリ構造の上に壁土をかぶせてある・地元産の木材を貼ってある、周囲の景観と溶け込んでいるけどどこか(月並みな言葉ですが)不思議な建物です。でもって諏訪大社の神長官(神職といえばいいか)をしていた守矢家の資料を展示しています。
諏訪大社は出雲の大国主の子であるタケミナカタが祀られてるのですが、タケミナカタが諏訪に来る前に居たのがモリヤシンという神様で、その末裔がいまでも茅野に残る守矢家といわれています。一方、タケミナカタの末裔といわれてるのが諏訪一族で末裔の一部は大名になります。正直なところ、その説明が歴史にかかわるとはいえちょっと雲をつかむような話で、たじろいだことを告白します。でも考えてみたら八百万の神の国でもあるので、ありえない話ではないかなあ。
神事に使われたものの展示や(諏訪大社は狩猟の神でもあったので鹿は供物として扱われた)、織田家、真田家、武田家などの戦国大名などの書状などがありました。ばかみたいなことを書いておくと、書状をみていると歴史上の人物って「ああほんとにいたのだなあ」と、妙に納得してしまうところがあります。
【泥船・高過庵】
神長官守矢資料館のそばにあるのが通称「空飛ぶ泥船」の茶室です。これは諏訪大社とは関係ありません。存在は知っていたけど実物を見たのははじめてです。やはり藤森さんの作で地面に固定されているものという建築の通念をひっくり返したというか、唸ってしまう建築です。
ワイヤでつるしてあって、必要に応じて梯子を掛けて入るのですが、けっこう揺れるらしかったり。
泥船のそばにあるのが2本の栗の木の上に茶室が作ってある高過庵です。泥船と同じく周辺と溶け込んでます。瑣末的感想ですが、建物の色ってなんかこう、重要すっね。
6mの樹上にあって、梯子を利用します。隠れ家みたいでいいなあ、と思っちまったんすが、経済性や実利と関係ないこういう建築が存在することが、なんか嬉しくなっちまいませんかね。そんなことないかな。
【真澄】
最後に上諏訪の市街地にある宮坂醸造という酒蔵へ。神州一味噌のほうが知名度はありますが、
真澄という日本酒の醸造元でもあります。酔っぱらってて真澄のなんだったかはを覚えてないけど真澄という銘柄だけは確実に覚えててあわよくばもう一度、というだらしない酒好きが高じて寄った次第です。
日本酒を醸造する場合に酵母が必須なんすけど、製品っていうか酒質のばらつきを抑えるために仙台の浦霞とか秋田の新政とかいくつかの酒蔵から酵母を分けてそれを各地の酒造が利用することがあるのですが、真澄もその酵母を提供した蔵のひとつで(7号酵母と特記してあるものは真澄発祥の酵母です)、しかし不思議なもので真澄と同じ酒にならないのが発酵の世界のおもしろいところ。でもって真澄が個性的なお酒か、というとそんなことはないです。すーっといってしまうのが怖いところ。
試飲が可能だったので、以前飲んだのがなんだったか、ってのを横において飲み比べをしました。個人的に「ああこれがいちばん良いなー」と思ったのが辛口の普通酒だったのですが、純米大吟醸を含め、どれも甲乙つけがたかったり。気に入った酒を(普通酒ですが)、ちゃんとお持ち帰りしました。
【上諏訪駅】
上諏訪駅では蛇口をひねると温泉が出ます
もうちょっと遊んでいたかったな、ってのをお湯で流して帰京しました。