新宿から中央線で2時間くらいゆくと勝沼というところがあります
甲府盆地の東端にあたるところで、市町村合併でいまは甲州市という名前になっています。
【鳥居平へ】
勝沼のあちこちにブドウ畑がひろがります。勝沼は寒暖の差があってブドウ生産に適した土地です。いまはシーズンオフで、生食用のブドウの収穫も終わっているんすが。
勝沼行きのきっかけは10月にのんだワインです。縁あって山梨産ワインというのを以前から服用するようにしているのですが、そのなかで鳥居平という名の入ってるワイン(白)を購入したところいやらしくない酸味とフルーティさのあるもので印象深く、酔いながらその場でいちおうメモを取って、機会あればもう一度、と思えたのです。でもって勝沼まで行けばなんとかなるだろうということで、勝沼へ来た次第。
実際どんなところか、というのを目にしておきたくて鳥居平へ
平がつくのに平坦地でもない思ったより急な斜面で、けっこう雑草があるということは水分が豊富なのか、それとも地表面が崩れるのを防ぐためにわざと植えてるのか。素人で農学部卒ではないのでへたなことは云えません。行ってどうこうというわけではないんすが「え?こんなところなのか」というか場所があんまりよくなさそうだからこそ、印象に残るワインができるのかなあ、とにわかワイン通は思っちまったんすが。
でもって(うまくとれなかったのですが)扇状地の上にあります。扇状地の真ん中は果樹園に向く、ってのを高校時代の地理の授業でやりましたが、まさしくそれです。このあと鳥居平のブドウを使ってるワイン製造元へ行きワインを購入。
【シャトーメルシャンワイナリー】
メルシャンというのはワインではわりと規模のでかいところで
有料のツアーがあるので参加しました。
素人にもわかるようにレクチャーつきです。製法の差から説明があり、赤ワインは皮や種をそのまま利用し、白はブドウの実だけを利用する、ってのは知ってたのですが(ロゼは果皮も一緒に発酵させ、ほどよく色がついたところで果皮をとりのぞきます)、発酵そのものはいまはどれもステンレスタンクでやるのですが、育成させるのは赤は樽でやることがあり、ロゼや白はタンクのみで、という差があるようです。もちろん酵母ももちろん変えるのだとか。印象深かったのはメルシャンのかたが、日本はワインの消費量が一人当たり3リットルで、ともかくほかのアルコールに比べてワインがなぜか飲まれていない、あんまり仰々しく考えないで気軽に飲んでほしいのです、とのべていました。白ならきのこ系の天ぷらや鮎の塩焼き、赤ならみりんや醤油を効かせたもの、ロゼはホイコーローなどの甘辛めの中華料理にあう、という説明もあったのですが、ううむ、たしかに云われてみればワインというのはあまりビールのように気軽に飲まれてないなあ、という気が。大関・月桂冠みたいなワンカップサイズがあれば話はちがってくるのかな。そんなことないか。
110年前に建てられた醸造所のあとが資料館になっています。明治初期に甲府に赴任した山梨県知事が殖産興業のため設立したワイン醸造会社が行き詰まったのち、営業権等を引き継いで設立された会社がメルシャンの源流企業のひとつです。
左に大黒ブドー酒があります。勝沼で本格的なワインを生産したものの苦戦してしまい、明治30年代後半に甘味果実酒「大黒ブドー酒」を手掛けます。サントリーの赤玉や合同酒精(神谷バー)のハチブドー酒が甘味果実酒なんすけど、蒸留酒を添加した(酵母による糖分の分解を抑えて甘くした)ものが戦前より流行していて、メルシャンの前身企業も時流にあわせることで企業を存続しました。明治から続くメルシャンの売り上げにおける本格ワインの比率が甘味果実酒を上回るのは40年くらい前のことです。ここらへん日本人の舌というのが微妙に変化してきたのかなーと思わないでもないのですが、私はいわゆるアラフォーなのでへたなことは云えませんが。
祝村ヴィンヤードとよばれてる見本ブドウ園です。収穫期は終わってますからなにがなんやらですがメルローであるとか、品種ごとに欧州式に植わってます(日本ではブドウが育つときに雨が多くかびさせないために地面から離したほうがよいとされているので棚に枝をはわせるやりかたが主流です)。メルローなどのワイン用のブドウは粒が皮が厚く糖度と酸味が強いのが特徴です。日本で古くから栽培されてる甲州などは生食に向くのですが、ワインにもできます。ただしその場合メルシャンのかたに言わせるとフルーティな味わいになるものの酸味がちょっと足らないそうで。甲州というのは江戸期には勝沼で食べられていたらしいのですけど、どうやって勝沼に来たか、諸説ある謎の果実なんすけどって、若干ずれちまいましたが。
糖度を増すためブドウは1枝から2房までってのが鉄則なんすが、今回はじめて知ったのは古い枝は切るそうです。新しい梢に花→実がつくのだけど、古い枝をそのままにしておくとそっちへ栄養がいっちまうためで、来月には選定作業の時期に入るそうです。けっこう手がかかる果実なんだなあ、と認識をあらたにしました。
【トンネル】
勝沼にはワイナリーが30以上あります。勝沼で生産されたワインなどが貯蔵されてるのが
中央東線の深沢トンネル跡を利用したワインカーヴです。トンネル内が一定の温度で保たれているのでワイナリーや個人が利用する貯蔵庫に転用されています。
でもってすぐそばにあるトンネルが大日影トンネルといい、こちらは遊歩道として整備されています。
されてますっていっても、電気がところどころついてるだけなんすが。
でもってメルシャンでの説明だとトンネルを経由して中央東線の開通により甲府盆地および勝沼から生食ブドウやワインを東京へ短時間で大量輸送が可能になった点でインパクトの大きい出来事だったらしく、線路の付け替えにより廃線になったあと産業遺産として残しているらしかったり。だいたい20分くらいで出口へ。くらかった分、出口の光のさし込むところが印象的でした。
←現在の中央東線 廃線あと→
トンネルの出口からそう遠くないところに駅があります。
季節外れでしたが、でも美酒をのんで・買えたので、満足して帰京しました。