マルス信州蒸溜所へ

諏訪湖から浜松に向かって天竜川が流れていて、そのうち長野県内で天竜川の流れるあたりの一部は伊那谷と呼ばれることがあります。伊那谷の宮田村というところには

マルス信州蒸溜所があります。マルス本坊酒造の商標で、ウィスキーの原酒の蒸溜所です。(山梨にワイナリーがあるので)マルスという名前は聞いたことはあっても残念ながら口にしたことは無く、興味があったので見学しています。

中央アルプスの(残念ながらガスってて見えませんでしたが)木曽駒の麓にもあたる工場のそばの川の石は真っ白でおそらく花崗岩と思われ、それと水がどう関係するのか不勉強ながらわからぬものの隣町に養命酒を筆頭に伊那谷に複数の酒蔵があることを勘案すると、伊那谷は酒造りに適した良い土地なのかも。

ウィスキーは(麦芽を使う)モルトウィスキーと、大雑把に書くとトウモロコシや小麦等と麦芽を併せてを使うグレーンウィスキーに分けられますが宮田村で作られてるのはモルトウィスキーのほうです。

モルトウィスキーは(二条大麦の)麦芽をまず粉砕して(その麦芽を粉砕する機械を眺めることが出来ます)

粉砕したものを温水と混ぜて攪拌し麦のでんぷん質が糖化して甘い麦汁になり(その撹拌の機械を眺めることが出来ます)

その麦汁に酵母を加えて発酵させると、糖がアルコール(と炭酸ガス)になります。この時点で度数は7%程度で、その発酵槽を眺めることが出来ます。(この時点で乳酸菌も関係してくるようなのですが)ステンレスとパイン材の2種の発酵槽がありました。おそらくそれぞれ違う味と香りに仕上がるのかも、なんすけど。

発酵したものを蒸溜釜で2度蒸留させます。蒸溜釜は蒸気で加熱しています。どちらが一回目に使う初溜釜でどちらが二回目に使う再溜釜で、釜の上部が接続している冷却器に差異がありました。初溜釜では度数20%、再溜釜では70%にもなり、できた原酒は加水の上樽などに詰めて貯蔵庫で(文学的表現を借りるならば)しばし眠りにつきます。

見学した23日は攪拌の機械と蒸留釜は確実に稼働してまして、糖化するときの麦芽の匂いなのか、それとも蒸留によって濃縮された発行した麦の匂いなのか、思わず「こういうところで死にたい」と口走ってしまう程度に恍惚としてくる香りに建物内は満ちていました。建物内は極めて清潔でなので原因は麦以外は考えにくいのですが。舌による味覚もさることながら香りが多幸感を増すはずで、私は麦の香りに良い意味で弱いのだな、と改めて自覚してます。

さぞかしいい香りに満ちてるのでは?と思われる貯蔵庫は残念ながら見学できず。

制限付きながらも試飲は有料でできるのですが自動車を運転してくれてる手前、ひとりだけ飲むほど極悪人にはなれません。もっとも、匂いだけはかいでいてハズレではないだろうと確信して、宮田村にお金を落としてきました。年末年始にあける予定です。

以下、くだらないことを。

天気はそれほど悪くはなかったのですが晩秋ということもあって中央アルプスから降りてくる風が寒く、隣の駒ヶ根にあるお寺を参拝ののち蕎麦屋に寄ったとき入店時の体温計測で自己ベストの32度6分を5回叩き出しています(さすがに3回目くらいからは2人して笑いだした)。その後店内には無事入れてて、お品書きを眺めながらお茶を頂いてたのですが、つい本心から口にしてしまったのが「あー生き返る」。鼻で感じたり皮膚で感じたりなどの体感の経験って、死ぬとか生き返るとか生死にかかわる言葉がぽろっと出てきませんかね。ないかもですが。