観蓮会

西東京市という都市があるのですがともかく東京の西のほうに田無というところがあります。そこにあるのが東大の農場というか正確には東京大学の生態調和農学機構というところの施設なんすが、この時期に蓮見本園で観蓮会があります。

不思議なもので蓮は朝に咲きます。植物園系で行ったことがないところで、公開期間中のうち週末に開いているのは今日だけだったので「どうする?」と念のため訊いて、休みの日であっても朝早くから出かけたわけです。バカですね。

蓮の花というのは咲くのは4日ほど。1日目はつぼみが解ける程度に朝にちょっと咲き、2日目朝に満開(しかしそのうちつぼみになる)、3日目は閉じることなくちゃんと咲き、4日目朝になると散ってゆきます。奥のほうにつぼみのようなものがありますが、あれが1日目で、手前に咲いてるのがおそらく4日目です。でもって

ロシアの蓮でカスピカムというやつなのですが、蓮見本園にはあちこちから取り寄せた蓮が(おそらく)百種近く栽培してあって、終わってしまったものもありますがまだけっこう咲いていました。たとえば

杏花春雨という中華料理みたいな名前の中国湖北省の蓮です。

重弁一丈青というやはり湖北省のものです。必ずしも中国の蓮は八重ってわけではないのですが、花弁が多いのかなあ、という気が。国産の蓮もあって、そのうち興味深かったのが京都の蓮です。たとえば

巨椋大黒というのと

小倉西という蓮で、おそらく京都府巨椋池もしくはその近辺の蓮にちなむもの。巨椋池そのものは干拓でなくなりましたが蓮に名を残すってのは風雅というかなんというか。想像するしかありませんが時期になるとよい眺めであったのかなあ、と。

京都産ではありませんが、天竺斑蓮っていう江戸時代にはあったといわれてるものに

これまた清月蓮という江戸期にはあった蓮です。江戸時代には蓮の改良がおこなわれていて、さらに蓮見ってのが江戸では定着してしました。有名なのは上野不忍池で、でも蓮見にかこつけた逢引きもあったとされています(朝早いから前泊するので)。話を元に戻すと蓮の原産はアメリカ東部と日中印周辺の東洋の2種で、わりと交配しやすいので観賞用の蓮の改良は今でも続けられています

月のほほえみっていう、緑地植物実験所が作出した観賞用の蓮です。緑地植物実験所が生態調和農学機構の母体の一つで、最近だと緑地美人というのを新種として出しています。

新品種の開発ばかりが東大の役割ではありませんで、農場の方のお話を伺って興味深かったのは蓮っ葉が水をはじくのはなぜかという疑問からその構造を研究して、撥水性繊維素材に応用できないか、ということやってるのだとか。

蓮の茎をホースにつないで、蓮の葉がどのように茎とつながっているかわかるようにしたデモンストレーションです。念のため書いておくと蓮の葉の穴から茎を通じて酸素を地下茎部分に送るわけっす。観賞用の蓮ではできませんが、食用の蓮の地下茎がレンコンです。

花弁が散った後のシャワーヘッドみたいなのを花托といい、穴のようなものが見えるかと思いますがそこに蓮の実ができます。農場の方の説明ではじめて知ったのですが蓮の実も食用になるらしく味は栗に似てるらしかったり。
ハスとも農機具とも関係ないのですが来訪者向けにいくつかの研究成果を構内でパネルで発表してました。「桃は果実発育中は光合成活性が高いが収穫後はそれほどでもないのはなぜか」というのがあって要約すれば「働かせすぎると桃は燃え尽き症候群になりサボりはじめる」という結論のようで、つい読みふけってしまったのですけど、なにごとも適度が大切なのかもしれませんって、そういう問題じゃないか。

眠いうえに、朝めし抜きで来たので腹は減ってたのですが、不思議と途中からそれを感じずにいました。蓮って、不思議な花なのかもしれません。

構内にはヒマワリが植えられててちょうど咲いていたのですけど、刈ってるところでした(肥料にするのです)。

1本100円で売ってて、どうしよっかなーと思ったものの「買ってどうするの」のひとことで我にかえりました。
うむ、たしかに。