十数年前の大学生の頃だったかダイエーはベルギーからバーゲンブローというビールを大量に買い付けて安売りをしていました。元忠実屋のダイエーで、150円しなかった記憶があります。味の印象は覚えてないのですが、当時バドワイザーやハイネケンが200円くらいしたはずで、ベルギーから大量輸入して安価に大量に売りさばくという商売の仕方がけっこう強烈に印象に残りました。当時はダイエーは規模では日本一でしたからそんなことができたのかもしれません。いまから思えばあのあたりから発泡酒がリリースされ麦酒系酒類の値段は下がりはじめてて、ダイエーというのは価格破壊の先駆者だったところがあります。
当時はダイエーは栄光の頂点にいたはずなのですが、長続きはしなかったようです。佐野眞一という人のノンフィクションにカリスマというダイエーの故・中内オーナーを取材したものがあり、晩年の中内オーナーの、ダイエーの店舗の視察の状況をそのまま描写しているところを読んだことがあります。弁当コーナーにお茶がないことをとらえて「君は弁当をのみものなしで食うんか」と担当者を叱咤し、店内の大量のクレソンのパック詰めを目の当たりにし「君んちでは大量のクレソンを喰わすんか」とこれまた担当者に怒ります。記述を読む限りダイエーは拡大を続けるなかで日本一となり価格破壊を成し遂げたものの、末端では商売上は客を見てない人材が増え、組織が有意義には機能してなかった部分があったように見受けられます。ダイエーは中内オーナーの奮闘むなしく行き詰まり金沢の武蔵ヶ辻のほか、千葉や松本、広島駅前ほか多くの店を閉め、イオン(ジャスコ)の支援で再生の道を歩みはじめますがうまくいかず、新聞報道ではイオンが完全子会社化してダイエーの屋号も数年後に消滅することとなりました。
しかしそれで問題は解決するのか、というとわかりません。ダイエーが抱えてる問題は既存の店舗の売り上げが伸びないということですが、看板を掛け変えたところで劇的に変化するとも思えません。トップバリュを含めイオンで扱ってる商品を入れてもダイエーが好転しないということは、水産物、畜産物、農産品をふくめイオンやダイエーに並んでいる商品がすでに平和堂やゆめタウンやイトーヨーカドーといった競合相手に比べられ、そっぽを向かれ、負けているということであったりします。じゃあ、なにが売れるのか、っていったらそれは難しい問題です。でもひとつだけわかってることがあります。発泡酒がでてからダイエーのバーゲンブローがほどんど話題にならなくなったのと同じで、安いというのは日本ではけっして永続的な売りにはならないのです。KY=カカクヤスクだったはずの西友は最近は「ど生鮮」をウリにしています。
小売業勤務ではないので深入りはしませんが、世の中変化するっていう一言で片してしまっていいのかわかりませんが、なんとなく一時代が終わったのだな、という印象がぬぐえなかったり。「げーんかーいなーだーのーしーおかーぜにー」という歌いだしをきくと「われらーのわれらのーダイエーホークス」って歌える程度に金山のダイエーにはお世話になってたので、寂しさがあります。