宝くじ2

政治の話はあまりしないほうがいいと思ってるのですが、なんぼなんでも、と思ったので。


高知県土佐くろしお鉄道という会社があります。以前は国鉄が建設推進・運営してた路線で、採算上の理由から廃止しようとしてたのを地元出資の会社が引き取り運営してるものです。中村と宿毛を結ぶ路線を運営する第三セクターの鉄道で過疎地ですから営業成績は決してよくありません。高知の西はそもそも高速道路もない地域で、山間部も多く道路事情も良くないので鉄道を残しておいてるのです。で、その土佐くろしお鉄道には宝くじ号ってのがあります。新車のディーゼルカーを宝くじの宣伝普及事業をすることを条件に宝くじ協会に購入費用を助成してもらったのです。車体には実際宝くじの宣伝普及事業である旨、明記されてます。で、その助成の資金のもとは宝くじの売り上げです。宝くじ協会は宣伝普及を行うので宝くじの売り上げの一部が宝くじ協会に分配されてて、宝くじ協会は宣伝普及を条件に各地にいままで助成をしてました。実は土佐くろしおに限らず、長崎や宮崎、徳島でも似たような鉄道車両の助成の事例があります。鉄道車両だけでなく、乳がん検診に必要なマンモグラフィ装置を載せた車両の助成も行ってます。
でもって、今回の「事業仕分け」ってので、この「普及宣伝活動」が批判されました。効果があるの?ってなことらしいのです。冷静に考えてどう考えても効果なんてないでしょう。土佐の例なら人口が80万もない高知県のさらに西の端で、周囲は山と海しかありません。検診時や農作業や魚網の整備の合間にその車両を見て、宝くじってあったよな、買おう、なんて人は少ないでしょうしあってもたかが知れてます。でも、見た人・乗った人宝くじは社会に役に立ってるんだ、くらいは理解できるはずです(少なくとも私は現地へ行くまで、そんな使い方をしてることを知りませんでした)。そもそも宝くじは地方自治・地域振興のためのものです。そういう使いみちなら納得するんじゃないか、と。
購買欲を刺激するような普及宣伝効果としてはきわめて実効性の薄い宝くじの宣伝普及活動を止めちまうと、困るのは吹けば飛ぶような財政基盤の弱い地方です。マンモグラフィの装置やディーゼルカーが財政基盤が強くない自治体や赤字の三セクの資金だけで買えれば問題は無いのです。でもそれができないから苦労してて、宝くじ協会の宣伝普及事業を頼ってるわけで。その地方が抱える問題をすっ飛ばして、効果が薄い・無駄だからやめるべきってのはちょっと違うんじゃないのかなあ、と思うのです。


「効率の悪いもの、無駄を削る、それが良いことだ」ってひとつの答えをあらかじめ設定しておき、問題を仕分けするのは勝手なのだけど、その答えは常に妥当か、って言ったらそうではないはずです。効率が悪いなにかがある、ということはそこに理由があるということが多くて、そこになんで効率が悪いものがあるのかという理屈やその根本を理解・解決しないで表面だけいじったって意味はない・事態は悪化するだけじゃね?そもそも「無駄に見えるもの・効率の悪いものをなくしちゃえばいい」っていう「答えがひとつしかない」状態ってのはほんとはどこかおっかないのでは?なんて思うのですが。