安全ということ

たまにはまじめなことを。
JR北海道の正式名称は北海道旅客鉄道です。鉄の字はほんとは金に失うではなく、矢です。大きな声ではいえませんがそもそも「鉄」という字を分解すると「金、へんに失う」になってゲンが悪いのでシャレにならないよってんで、JRグループは四国以外は商号に金に矢をつかってます。
鉄道事業というのはそれほど儲かりません。儲からないけど止めるわけにもゆきません。JR北海道単体でみると25年度決算では鉄道事業で776億の売上があるのですが、1112億経費が掛かってます。差引335億の赤字です。経費を圧縮したいところですが、除雪費用をけちるわけにもゆきません。車両でも(JR九州の場合JR四国JR東日本から中古の汎用性の高い車両を購入してコストを減らしてるのですが)北海道は耐寒仕様の車両が必要なのでけちることができません。関連事業で26億ほど収入がありますが、しかしその穴を埋めることはできません。JR北海道に限らずJR九州JR四国は事情を勘案して民営化時に資金(経営安定化基金)を事前に国庫からもらっててそれを運用して経営し(JR北海道は6822億円、JR九州には3877億円、JR四国に2082億円)25年度決算ではこの利息がJR北海道には254億ほど入りました。これで赤字をある程度吹き飛ばせます。さらに旧鉄道建設公団の剰余金を流用した支援措置が数年前からとられることになり、JR北海道には2200億、JR四国には1400億ほど無利子で貸し付けをして債券を買いその利息配当が得られて55億ほど収入があります。ざっくり書くと単体では税引き前純利益は9億ほどです。ホテルやバス、小売事業等の子会社を含めたグループの連結決算では最終損益は40億の黒字です。
数字だけ読むと、JR北海道はけっこう厳しい経営です。だから安全に対する投資を怠っていたのではないか、とは書けません。でも軌道においてイレギュラーなことが起きていてそれを把握しておきながら一年近く放置していた場所がある、というのを聞くと、経費をかけたくなかったのではないか、という邪推をどうしてもしたくなるのです。安全というのは直接投資効果が出てくるものではありません。また安全にかけたコストは効果がみえにくいっす。投資したからといって数字が跳ね上がることはありません。投資しても・しなくてもなにも起きなければいちばん良いのですが、前にも書いたのですが金かけたことによって無事故であったんだけど、金かけてなくても無事故だったんじゃね?といわれるときついです(怒られそうなことを書くと今回も事故が起きるまでは軌道に関して一年近く無事故であった)。また安全に投資をしてたととしても、事故は起きちまうことがあります。じゃあ安全になんで投資するのか、というと単純な話、最小限に食い止めることが可能であることが多い・よりましな状況へ持ってくことができる、ということにつきます。フェイルセーフということばがありますが、事故はおそらくゼロにはできません。でもゼロ方向へ持って行くことは不可能ではありません。
おそらく「世の中コストがかからないほうが良い」という方向に進んでるのですが、トヨタの生産方式でいうとコストアップの要因はなにか、というと、よく言われるムラ・ムダのほかには「ムリ」があるのです。ムリなことをやったり・やらせたり・放置して、その結果ムリなことが原因でトラブルが起きるのです。そのトラブルがコストアップ要因になる。もしかしたらぴんと来ないかもしれませんがそこらへん叩きこまれると、ムリというのが悪いこと、という意識になります。今回の事例も「補修の必要な箇所をそのままにしたムリ」が引き起こした事件のはずです。ムリをどうとらえるかで、違ってきます。
個人的には技術を駆使してディーゼルカーのスピードアップに精力を注いだJR北海道に好感を持っていたので今回の件は極めて残念なんすが、いまからでも遅くないので「ムリ」を排除して、再度復活を遂げてほしいと思っています。株主でもなんでもないのでそんなこという権限はこれっぽっちもないし経営的にはかなり厳しいのは承知の上ですが、ぜひ安全には金をかけてほしいです。
でもって世の中の現場から「ムリ」に結びつくコストカットが排除され、必要な経費が投入されて「ムリ」が減って安全な世の中の方向へすすめばいいんすけども。