道路特定財源の話3

政府は13日午前の閣議で、道路特定財源の2009年度からの一般財源化を明記した「道路特定財源に関する基本方針」を決定する。同財源を10年間維持する道路整備費財源特例法改正案が同日午後の衆院本会議で再可決され、成立する前に確固たる姿勢を示すことで、同法案と福田康夫首相が打ち出した一般財源化方針が「矛盾する」との野党の追及をかわし、国民の理解を得る狙いがある。
基本方針は「一般財源化の法改正により、道路整備費財源特例法改正案における道路特定財源制度の規定は09年度から適用されないこととなる」として、道路特定財源制度を08年度限りで廃止することを強調。一方、一般財源化後も「必要と判断される道路は着実に整備する」とともに、地方財政に影響を及ぼさない措置を講じることも明記した。揮発油税などの暫定税率について現行水準を維持することや、新たな課税根拠、道路整備以外の支出の在り方を検討する関係閣僚会議の正式設置も盛り込んだ。
5月12日付神戸新聞より転載

何回も書いてる面白くもなんともない話で恐縮です。
えっと、ガソリン等にかける税金の本則税率(本来の税率)はガソリン1リットルあたり28.7円なんすけど、25円程度加算して長い間53.8円にしてました。なんでそんな税金かけてたかっていうと、道路整備のためにっていうことがあって、それを30年続けてきました。続けてきましたってのは緊急避難的にかけていたというか、××年までの時限を設けてこれくらいかけますよ、っていう法律を作って暫定というカタチでずるずる30年やってたからです。今年の3月末でその期限が切れることになっていてそのタイミングに、ガソリンを下げるぞ、暫定税率廃止!と叫んで民主党が国会で闘争したので、一ヶ月ほど28.7円の本則税率の期間があったわけです。で、道路特定財源っていうのは、道路しか作れないという前提の下に道路利用する自動車保有者にかけてました。なんで53.8円にしててもたいした争点にならなかったかといえば、道路を作って恩恵を受けるのはそのべらぼーな税負担をしてる道路利用者である自動車保有者だからです。前にケーキでたとえましたけど、ショートケーキを食いたいと思う人が多いからショートケーキ好きに税金をかけてちまちま小銭を財布に溜めておきその財布からショートケーキ愛好者のためにいままでショートケーキを大盤振る舞いしてきたのです(で、たまにショートケーキ以外の使い道もありましたけども)。ですからあまり争点にならなかった。しまなみ海道なんかを管轄する本四架橋公団の債務処理とかにもつかったんすけど、妥当性はあるでしょう。


で、今国会で今まで会計というか財布は別で道路は道路の財布だったけどお金が無いから一緒くたにしてしまえ、っていうことになりました。道路利用者自動車所有者のみが負担する道路特定財源一般財源化するってことは道路以外にも使いはじめることを意味します。三月末までの53.8円の税金は道路に使ってましたけど、これからは53.8円の税金は道路建設や雪かきや地震被害の補修とかの道路の予算以外にも使いますし、本則の28.7円にも戻らないことが確定しました。ケーキのたとえならショートケーキ愛好家から搾取したちまちま溜めてたお金をみんなで焼肉にでも梅干にでも使おうよ、ってことであったりします。これもまた繰り返しになるんすけど、受益と負担の関係を解消してしまって自動車利用者、所有者にだけ高額な負担をさせて一般財源として使うってのは、ほんとはおかしいはずなのです。私は別に車を持ってないので痛みはないのですが、なんかへんだぞ?とはおもうんすけど。ちょっと想起して欲しいのですが道路特定財源からアロマだとか訳判らないものに対する支出はおかしいのですけど、なんでおかしいかって言えば目的以外のことに支出してるからです。ガソリンに対する税金や本則の約二倍っていう加算額はべらぼーな税額はそもそも本来は道路を作るためのもので医療や学校整備ってなら、ちょっとは理解できるかもですけどそれもよくよく考えれば変なのです。なんで学校整備のために自動車保有者は本則の倍の税金を支払わなきゃいけないんすかね。スジとしてはほんとに必要な道路を整備した後には補修にかかる費用分だけの税額に戻すべきなんじゃないかと思うのです。
私がここで吠えてもしょうがないんすけど。


以下、関係ない余談です。
無駄な公共事業をやめよう、っていうのはなんとなく、心地いい響きです。赤字が見込めそうな有料道路を作らない、ってのは確かになんだか正義の匂いがします。
採算っていうのは確かに重要なんですけど、じゃあ、採算がとれる範囲内でっていう公共インフラの運営っていうとものっそ難しいのです。
都営地下鉄は去年47年の歴史上はじめて31億の黒字を出しました(310億じゃないっすよ)。ただし累積債務が新銀行東京も真っ青な4000億以上あります。しかし都民の足です。赤字を垂れ流してるからって公共インフラをつくらなかったほうがいいのか、やめていいのか、っていったらそうではないはずなのです。
公共インフラの採算性というのをほんとに重視する必要があるのかというとちと違うのでは?と思えるのです。本四架橋を瀬戸大橋、明石海峡、しまなみ、と三本も架ける必要があったかどうかってのはともかくとしてどれも必ずしも採算は良くないでしょう。単独の経営では債務の返済が成り立たないから道路特定財源で本四架橋公団の債務を返済したりしてます。でも本四架橋は海路に頼らずに往来できる「ほんとに必要な公共インフラ」で四国や瀬戸内圏の多くの人がその利益を享受しています。公共インフラの諸施設の採算面はたしかに赤字垂れ流しでアイタタ…な状況ですが、採算で判断して公共インフラ整備について「無駄な公共事業、道路を作るな」ってのは、ちょっと筋違いなんじゃ?と思えてならないです。