Between devils and deep blue sea

大阪府内の高校生でつくる「大阪の高校生に笑顔をくださいの会」の12人が23日、府庁を訪れ、橋下徹知事と私学助成の削減や府立高校の統廃合など府の教育行政について話し合った。授業料の増額につながる私学助成削減に関し「学ぶ機会を奪わないで」と涙ながらに訴える生徒もいたが、橋下知事は「全府民に少しずつの我慢をお願いしている」と財政再建への理解を求めた。議論は、予定の20分を大幅に延長し1時間半に及んだ。(後略)
(10月24日付毎日新聞より転載)

ちょっと古いですが大阪府予算の問題が世の中で騒がれてることを知りました。これについてちょっとだけ。

多くの自治体がそうなんすけど税収入が落ち込む一方です。歳出をじゃあその分削りましょうか、ってはなかなかいきません。歳出が歳入を上回るという構造になりがちで予算編成にあたって財源が不足する財政環境に多くの自治体も悩まされてきました。じゃ、どうするか、てっとり早いのは債券を発行して引き受けてもらうやり方です。早い話が足らないから貸してーな、と民間から借りる借金です。多くの都道府県や市がこれを発行してます。その自治体に住む住民が債券を引き受けることもありますし、そうでないこともあります。ただその借金の額におどろいた知事もいます。たとえば長野の田中前知事と宮崎の東国原知事です。田中前知事と東国原知事に共通するのは苛酷な改革をしながらも県産品をPRし農業生産物の出荷単価をあげたり県内観光地に観光客を呼ぶことで県内を活性化させ税収を増やそうっていう手法でそれがよくピックアップされましたがそれぞれの県の財政再建も大きなテーマとしました。長野の場合田中前知事が財政状況を積極的に公開し人件費抑制や公共事業削減を行い、各種補助金も減らしてます。赤字を垂れ流してた第三セクタの鉄道会社に民間人を呼んで経営を任せて収支を大幅改善させたり、なんてこともし、長野県の財政は改善されました。宮崎の東国原知事もやはり財政状況を積極的に公開し人件費を抑制し公共事業を減らしています。県民の理解を得て歳出を減らすことで財政危機をなんとかしよう、という考え方です。


大阪府の場合はいままでは府債を増発してました。さらに府債をむやみに増やすわけにはいかないので府債の返済のために貯蓄した資金をいったん取り崩したりもしてきました。ただ、いままで借りた府債は利子つけて将来返さなきゃならないことには変わりありません。いつのまにか深刻にならざるを得ない4兆円以上の額が大阪府の借金としてのしかかるようになりました。いままでどうりやってると、そのうちデッドラインを超える状態になります。
借金をし続けてデッドライン=財政指標における一定水準を超えると「財政健全化団体」になり法に基づいて財政健全化に取り組まなければなりません。事実上「教職員室で使う鉛筆一本から国にお伺いをたてる」状況になります。指定されちまえば財政健全化が最大の目標になりますから教育・福祉・医療関係予算とか都市インフラ整備はいまより自由が利きませんしどんどん削られる可能性が高くなります。さらに「財政健全化団体」ってのは事実上自分たちで金を返せない自治体という意味なので信用力が低下しますから誰も資金を貸さなくなります。そもそも返せなくなったほどの借金を抱えてる人に誰が貸しますかね?私が融資担当だったら貸しません。
府が独自裁量で加減できる分野については削ってデッドラインを超えないようにしなきゃ、って動きは大阪の外からみてる人間からすると理解できます。叩かれてる橋下知事以下行くも地獄引くも地獄という状態にいま大阪府民の方は立たされてるんだろうな、ってことはうっすら見当がつきます。でも高校生にわかるだろうか、と思ったり。


橋下知事が私学助成もターゲットにしてるのは地方自治法の第232条の2で「普通地方公共団体はその公益上必要がある場合においては寄附又は補助をすることができる」とあって、「しなければならない」と書いてないのでしなくても地方自治法に反しないと判断したからかな、と。勝手な推測ですが。ちなみに大阪のオーケストラに対する府の補助なんてのも相当削減されそうだったりします。

橋下知事が選挙のときに掲げたスローガンである「子供が笑う大阪」ってのは将来の大阪を背負ってたつ子供たちに負債をのこさずってのと、教育予算の自由が利かなくなる「財政健全化団体」落ちしない大阪府を作るっていうことなんじゃないっすかね。私は大阪府民じゃないからこの問題について語る資格はないんすけど。