『ゆびさきと恋々』の5話までを視聴して

MXで夜に放映しているアニメ『ゆびさきと恋々』の5話を録画したものを視聴しました。原作は女性向けのマンガでここを書いているのはおっさんでしかしなにかが引っかかって視聴していて、匿名を奇貨として、以下、書きます。詳細は是非本作をご覧いただきたいのですが、大前提としては聴覚に障害がある手話を操る大学生雪さんと雪さんの大学の先輩の逸臣先輩との先輩後輩の話です。

いつものように幾ばくかのネタばれをお許しください。

雪さんに手話に関するノートを作って貰い逸臣先輩は手話を学習しはじめるものの、使いこなせてるかというとそれほどではありません。ので、逸臣先輩と雪さんは唇の動きや文字表記などで互いの意図を伝えあいます。とはいうもののとくに前者の場合は「ワーホリ」といった単語は唇の動きでは雪さんには「アーオリ」と読み取れるようで、ワーホリという単語を逸臣先輩も雪さんも知ってはいても一筋縄ではゆきません(ゆえに逸臣先輩は「する?」「しない?」というようなわかりやすい二択の質問をすることが多い)。その一筋縄でいかない意思疎通を2人して模索してる描写が5話前半では続き、二人ともベクトルというか考えてることが一緒であるということの雄弁な間接証拠のように傍からは見え、描写として秀逸でちょっと唸らされています。ついでに書いておくとそれらの模索は逸臣先輩の下宿先でのことで、招き入れる逸臣先輩やついてゆく雪さんに一瞬「は?」となるのですが、逸臣先輩と雪さんを見ていると「は?」となったこちらの心情が美しいわけではないことに気付かされています。

さらに不粋なもう幾ばくかのネタバレをお許しください。

逸臣先輩は複数の言語を習得していておそらく純粋な興味からか意思疎通において声を出すことに関して話が及びます。対して雪さんは5話まで手話を操るものの逸臣先輩の前はもちろん友人のりんちゃんや幼馴染の桜志くんの前でも声に出すことをほとんどしない描写で、それはなぜなのだろう?というのがあったのですが(5話では理由が明かされるものの逸臣先輩には云えず)、沈黙してしまいます。逸臣先輩も深くは問わぬものの代わりに沈黙したまま言葉をいっさい使わずに身体の動きで笑わせにかかり(詳細は本作をご覧ください)、こらえ切れずにふと出てしまった笑う雪さんを逸臣先輩がガン見します(そこが個人的には5話のクライマックスだと思えたんすけど個人的なことは横に置いておくとして)。意図を理解してもらうためや意思疎通のために文字や言葉に載せてしまうことだけを考えてしまいがちなんですけど、身体の動きで意図が通じることがある例をフィクションに巧く載せていて(もしかしたら他の人からするとどってことないのかもしれませんが正直目からウロコで)、ちょっと唸らされています。なおそれに付随してか5話後半では逸臣先輩は動作で雪さんに愛情を表現するようになります。

冒頭なにかに引っかかってる旨書きましたが、おそらく引っかかりの原因は描かれてる「完全ではない意思疎通」です。意思疎通がうまくゆくときはどういうときか?という答えのないことをずっと考えているせいもあるのですが、何年か前の『宇崎ちゃんは遊びたい』は日本語に不完全さがあるゆえに意思疎通が巧くいかない先輩後輩の話に思えてつい見ちまってて、『ゆびさきと恋々』はいくらか困難があっても意思疎通を模索して解決する先輩後輩の話に思えやはり引き込まれているようです。『宇崎ちゃん』と『ゆびさき』はどこか類似性があるように思えてならなかったり…って、アニメをそれほどみていないのでおそらく噴飯ものの感想かもしれないのでこのへんで。