宮城峡蒸留所見学

いまの会社法はどちらかというと取締役や社長というのは暴走をするという前提にして暴走しないように制度設計がなされています。裏返せば以前はそれほどそういう制度設計ではありませんでした。

スモーキーな良いウィスキーを作るためには大麦をビートと呼ばれる泥炭で燻しながら乾燥させながら麦芽を作る必要があるという理由からニッカウヰスキーは山形との県境に近い仙台の作並の山の中にその設備を作っています。

地上3階建分以上あるキルン棟と呼ばれる建物にある大きな設備で、しかし泥炭で燻した麦芽を海外から輸入した方が採算上よいということになり、数年で使われなくなってしまっていまに至ります。銀行なり大株主なり誰か止めなかったのかな…といまからならなんとでもいえますが、実物を眺め説明を聞くと、会社法を学んだ以上口外しませんが「こういう暴走、なんかいいなあ」と思っちまっています。主導したのは竹鶴さんという方なのですが、よほど魅力的な人物だったのではあるまいか?と想像します…って会社法の話をしたかったわけではなくて。

週末、その竹鶴さんが関与した宮城峡蒸留所を見学していました。

ポットスチルと呼ばれる単式蒸溜器の熱源は宮城峡の場合は蒸気を熱源とする間接加熱で、ニッカのもうひとつの蒸留所の余市は直接加熱です。その結果余市はワイルドな、宮城峡は軽快なモルトウイスキーが出来上がります。蒸留器の上部に注連縄がかかってるのが印象的で、神様に頼らざるを得ない部分があるのかも。

内部は見学できませんが連続式蒸溜の設備もあってなめらかな口当たりのトウモロコシ原料のグレーンウイスキーが出来上がります。ところでアルコールが好きな黴が居て蒸溜棟の前の樹木は比較的その黴の影響で黒くなっていました。シロウト感覚からするとちょっと不思議なのですが。

蒸溜後の蒸留酒を樽に詰めて熟成貯蔵する貯蔵庫も見学していて、見学コースにあった貯蔵庫はそれほどギッチリあるわけではありませんでした。興味深かったのはウイスキー熟成に使った樽に麦焼酎を入れて熟成させて商品化したものの売れ行き好調とはいかなかったようで。個人的には飲んでみたい感があるものの人は焼酎を香りで選ぶわけでは無いのかなあ、と。

ドラマの影響やハイボールの需要もあって増産に努めてて週末にもかかわらず蒸留所は操業中で、しかし一昨年に出来た貯蔵庫を満杯にするにはまだ3年くらいかかる…とのことで、盛業は喜ばしいかぎりですが品薄感はしばらく続くのかも。

試飲ができる見学コースだったのでキーモルトと呼ばれるものを試飲をしています。左下から時計回りに軽めに泥炭で燻した麦芽を使ったもの、フルーティな酵母を使ったもの、(シェリーの香りがする)シェリー樽で貯蔵したもの、トウモロコシ原料の甘い香りのグレーンウィスキー、製品として売り出されてる宮城峡で、どれも甲乙つけがたいのですがスモーキーなウイスキーを作ろうとした竹鶴さんに申し訳ないのですが個人的な好みはグレーンウイスキーでした。でもって、この試飲でおのれが「どういう香りが良い」としているかが手に取るように理解できています。

でもなんですが。

仙山線の電車が頻発しているわけではなく所内のテイスティングバーで時間をつぶそうよということになり、そこで余市ウイスキーを試飲しました。もちろん大麦由来のものでその麦芽の甘さもあるのですがスモーキーさが悪くなく「これも良いな」と思ってしまっています。あははのは。

酒飲みの鼻と舌はあてにならないということで…って長々と書いてきたのに最後がそれじゃダメじゃん