三郎丸蒸留所へ

高岡もしくは新高岡から南の砺波方向へ(頻度はだいたい1時間に1本くらいの)城端線というのが走っていて、その城端線に油田という駅があります。その油田のほぼ駅前にあるのが

若鶴酒造で、誰もが知っている超大手の蔵ではありませんが

若鶴もしくは黒松若鶴の名で知られた日本酒を醸しています。正確に書けば「日本酒も」で、日本酒のほかに(誰もが知っているものではないものの)サンシャインウイスキーの名でウイスキーも60年以上製造していて、ウイスキーが嫌いではなくむしろ好きで好きゆえに製造現場に興味があるので蒸留所を見学してきました。正確に書くと三郎丸蒸留所といいます。

三郎丸蒸留所は大きくなく敷地内の日本酒の製造棟に比べても小ぶりです。もともとは戦後すぐの食糧難のコメ不足の時代に日本酒を醸す代わりにまず芋焼酎製造をこころみ、その後ウイスキーに参入した旨の説明を聞きながら、木造の建物は同じ富山県内の機械工具メーカーの不二越から譲り受けたものと知り、初期投資を抑えたかったのだろうなあ…と勝手にソロバンをはじいていました。

建物は古いものの設備そのものは投資したばかりなのか真新しいものが多かったです。でもって9月まで続いた仕込みのあとだったせいか建物内部に入った途端、「ああここで死にたいな」と思わず口にでちまうぐらいウイスキーの良い残り香がかなりありました(口にしたので当然笑われた)。木に匂いが染みついているのかもしれなくて、こういう時木造の建物っていいですね。

真新しい設備のひとつにみえた(でんぷん質を糖分にかえる)糖化タンクと

おそらく新品に近い、発酵させるための木桶というか木槽です。木製品は乳酸菌が住み着きやすくて、亀戸のくず餅屋さんも小麦でんぷんの発酵に木槽を使ってる説明を読んだことを思い出しました。非理系のシロウト丸出しの感想なのですが、木も乳酸菌も、どこにでもありそうなものが美味いものを作り出すことに関係するのってなんだか不思議っすね。

蒸留器というかポットスチルです。以前は一つしかなかったので洗浄など大変だったそうなのですが近年、設備を更新して増設していまは2つ(なので生産量も増えた)。焼酎のポットスチルはステンレス製、ウイスキーは銅の板金を加工して作ったりするのですが、三郎丸の場合は近所の高岡の梵鐘制作の技術を生かした錫と銅の合金の鋳造製でおそらくここだけのものです。酒器も錫のものがありますから案外お酒って錫製品ってあうのかも。設備の高寿命化というか耐用年数も伸ばすことができた関連からか中小企業の新技術開発の表彰の盾もそばに飾られていました。

いつものように話が横にすっ飛びます

ウイスキーは大麦から作るわけですが、大麦を水に浸してしばらくすると発芽しはじめ、そのときの酵素澱粉を糖分にかえる働きをします。発芽しはじめたところで加熱していったん乾燥させるのですが、

そのとき(↑写真のような)泥炭を使うことがあり、その泥炭の匂いがウイスキーのスモーキーさに関連してきます。三郎丸蒸留所では泥炭で加熱した発芽大麦を原材料を英国から輸入してて、どちらかというと癖があり、好き嫌いがわかれます。大きな声では言えませんが万人受けする味ではありません。誰からも好まれるような味にはせず、嫌いな人を追うことはしない方針である説明を伺ってて、クセのある方が好きなので個人的には好感が持てています。が、なんだろ焼酎を例にとると、クセのあるさつま白波より比較的香りにクセのない黒霧島が好まれる昨今の傾向からすると、クセを堅持する姿勢はカッコイイけどちょっとした賭けかなあ、と思いました。賭けが巧く当たればよいなあ、と。

見学ツアーに参加していて質疑オッケイだったので、最後にくだらない質問をしています。他社の蒸留所は甲斐駒や富士山の近くにあって三郎丸蒸留所は砺波平野のど真ん中で、どちらが適してるのですか?と訊くは一時の恥と思って訊いてます。

返答は個人的には意外なもので、ウイスキーの熟成の場合は寒暖差が重要で夏暑くて冬寒い方が良くて、砺波平野は北アルプスを越えてくるフェーン現象で夏暑くて冬は豪雪地帯で案外適地なのだとか。そして会社の一番近い駅は油田とかいて「アブラデン」と読むのですが由来は菜種油のアブラで、元々は周囲は菜の花畑だったという由来も同時に教えてもらっています。それでピンと来たのですが、菜の花は適度な湿気を好むのでそこそこ湿気もあるわけで、アブラデンで作ってる限りは天使がそれほど分け前を要求してこないわけで。

日本酒のほか梅酒、それにウイスキーの試飲コーナーと売店があります。梅酒は誰からも好まれる味でぐいぐい行けます。が、対比してウイスキーは(私は好きなのですが)、ストレートでゆくとちょっと人を選ぶかなあ、という気が。

いくらか酔っぱらいながら城端線に乗って帰京しています。こういう時、駅のそばだとありがたいです。高岡にはgo toを利用して行ったのですが、クーポンは若鶴の売店富山市内でウイスキーに化けました。いつくるかわからないけど東京に第三波が来たら、楽しみながら口腔内と喉をアルコール消毒するつもりです。