赤玉スイートワインもしくは赤割のこと

森見登美彦さんの「有頂天家族」(幻冬舎文庫・2010)という京都を舞台にした小説の中に弁天という登場人物が呑むものとして、赤割というお酒が出てきます。赤割は甘味果実酒(甘味ぶどう酒)の焼酎割で、存在を知ったのは物語に関係なく富山でのことで試しにやってみて、そのあと作品を読みました。

その作品の中で他にも赤玉先生という赤玉ポートワインをすする毎日を過ごす落ちぶれてしまった大天狗もでてきます。主人公は赤玉先生が残した赤玉ポートワインをすすって「哀しく甘い」という感想を持ちます。作品を読んだあとそれが気になって、それまで一度も舐めたことが無かったので「どんなものだろう」と赤割を作る際に必要な甘味ぶどう酒である(かつて赤玉ポートワインと称したサントリーの)赤玉スイートワインを舐め、哀しく甘いって表現に唸っています。ちゃんと書いておくと普通のワインより甘いです。よく酒が人をダメにすると云いますがたぶんそんなわけはなく、文学的表現にひっかかって好奇心につられてしまうようなダメなところを酒はあらわにするだけです。

謎をひとつ書いておくと作中では桃色と書いてあって、実在する赤玉スイーツワインを富山式に焼酎で割っただけでは赤いだけで桃色にはなりません。レモンかなにかを混ぜてるのか?寺町三条あたりではどういう作り方をしてるのか?そもそも京都では呑まれてるものなのか?とかいろいろ確認したいところですが、残念ながら読んだのが去秋で、緊急事態宣言は先月解除となりましたが恥ずかしながらタイミング的に現在忙しくて京都へはまだ行けずじまいで、確認できていません。作中で弁天さんはその(桃色の)赤割の入った杯をのみ干すのですが(「白い喉を鳴らして」と描写されてて)、確かに赤割は甘いワインが入っていますから口当たりは悪くないのでぐいぐいイケてしまいました。ちゃんと書いておくと酒が人をダメにすると云いますがやはりそんなわけはなく、「のみやすいから」ってのんでしまう人としてダメなところを酒はあらわにするだけです。

山梨県にはぶどう酒の焼酎割でぶう酎というのがあり、県内の工場で製品化されてて白がハイボールとして売り出されています。甘さ控えめで、もし見かけたらお買い上げいただきたいくらいで、けっこうイケます。

でもなんですが。

はてな今週のお題が「赤いもの」でそれを奇貨として書くと、山梨県産ぶう酎に肩入れしたいものの、フィクションにに引っ張られて去秋以降赤いお酒の赤割に妙に惹かれるものがあります。おでんにあうのは人体実験済みで、呑みすぎぬよう注意しながら今冬も赤割で口腔内とのどの消毒をするつもりです。